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住所変更登記などが義務化!施行日はいつから?何が変わる?

不動産の所有者(登記名義人)の住所や氏名などに変更があったら、「住所変更登記」または「氏名変更登記」を行わなければなりません。引っ越しする場合、登記名義人の住所を変更する「住所変更登記」、結婚や離婚などで氏名が変わった場合は氏名を変更する「氏名変更登記」が必要です。

しかし本記事執筆時点では、住所変更登記と氏名変更登記は「任意」の制度で、忘れさられがちな手続きとなっています。

そんな住所変更登記と氏名変更登記が、2021年の不動産登記法の改正により、義務化されることが決定しました。申請を怠れば過料(行政上の秩序罰)が課せられます。この記事では司法書士がわかりやすく解説していきます。

住所変更登記と氏名変更登記の義務化について

まずは住所変更登記・氏名変更登記がどんな手続きかご説明します。

そもそも住所変更登記・氏名変更登記とは?手続きをするとどうなる?

住所変更登記・氏名変更登記とは、不動産の所有者が登記簿上の住所や氏名を変更する手続きのことです。登記簿上の「権利部(甲区)」には不動産の所有者がどこの誰かがわかるように、所有者の住所や氏名が記載されています。

【登記簿権利部(甲区)所有権に関する事項のイメージ】

順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
1所有権移転昭和〇年〇月〇日第〇号原因 昭和〇年〇月〇日売買
所有者 〇市〇町〇番地〇
佐藤次郎
付記1号1番登記名義人表示変更令和〇年〇月〇日第〇号登記名義人佐藤次郎の住所
原因 令和〇年〇月〇日住所移転
住所 〇市〇町〇番地〇

住所や氏名に変更が生じたら登記簿上の権利部の所有者に関する情報を最新の情報に更新します。登記簿上の所有者情報が現住所や現在の氏名と一致しなければ、所有権を証明することができません。

例えば引越しにより、住んでいた不動産を売却するとしましょう。そのときに登記簿上の住所が引越し前の旧住所のままだと売却できないのです。先に住所変更登記を済ませて、登記簿上の情報を旧住所から現住所に変更しておく必要があります(これを前提登記といいます)。

なぜ住所変更登記と氏名変更登記を義務化する?背景は?

登記簿を確認しても土地の所有者が分からない「所有者不明土地」が、問題視されています。国土交通省の調査で、平成28年時点で全国の所有者不明土地は合計すると約410万ヘクタールも存在することがわかっています。これは、九州本島の面積に相当するほどの広さです。また同調査で所有者不明土地の発生原因についても言及しており、その内訳は66.7%が「所有権移転の未登記(相続)」、32.4%が「住所変更の未登記」と報告されています。

では、所有者不明土地の何が問題なのでしょうか?それは、土地の利活用や必要な工事・修繕の妨げになることにあります。さすがに行政といえども、市民の所有する不動産を勝手に工事することは許されません。ゆえに、例えば土砂崩れなどの災害の可能性がある土地であっても、所有者を見つけられなければ行政は被害防止に必要な工事ができなくなるのです。実際に震災の復興がこの所有者不明土地が原因で遅れた場所もあるそうです。

このことから、所有者不明土地が近年大きな問題として扱われ、解消や発生予防が叫ばれるようになりました。これが相続登記や住所変更登記・氏名変更登記が「任意」から義務化される背景です。

出典:国土交通省

住所変更登記と氏名変更登記の義務化はいつから始まる?施行日は?

2021年の不動産登記法の改正により、2026年4月までに義務化されることが決定しました。施行日は未定でしたが、2023年7月28日の閣議決定で、住所変更登記・氏名変更登記は2026年4月1日から義務化されることとなりました。

住所変更登記と氏名変更登記の義務化で何が変わるのか

今まで任意だった住所変更登記・氏名変更登記が義務化され、期限と過料に関する規定が設けられました。ここからは期限や過料について解説していきます。

住所変更登記と氏名変更登記が期限付きに!いつまでに申請すれば?過去分も対象?

法改正以降は住所や氏名に変更があった日から2年以内に住所変更登記を申請しなければなりません。”住所や氏名に変更があった日”とは、住民票上の住所や戸籍上の氏名に変更があった日のことです。

所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

法務省 改正不動産登記法 第76条の5

施行日前に住所変更した場合も遡及(そきゅう)して申請義務が発生します。その場合、施行日(2026年4月1日)の2年後の2028年4月1日が住所変更登記・氏名変更登記の期限となります。遡及とは、過去にさかのぼって効力を及ぼすという意味です。つまりこれから先の住所や氏名の変更だけでなく、すでに未変更のまま時間が経過している不動産にも適用されることになります。

住所変更登記・氏名変更登記の義務を怠ると「過料」が科せられる

正当な理由なく期限内に住所変更登記の義務を怠ると5万円以下の過料が科せられてしまいます。

第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

法務省 改正不動産登記法 第164条の2

なお「正当な理由」とは、重病などが想像されますが、具体例については、今後通達などで明確化することが予定されています。

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住所変更登記・氏名変更登記の手続きについて

実際に住所変更登記・氏名変更登記をする際のご参考としてください。

住所変更登記の申請場所は法務局

住所変更登記は、所有不動産の所在地を管轄する法務局で申請します。例えば、東京都世田谷区に不動産をお持ちなら、東京法務局世田谷出張所です。

窓口に出向かなくても、郵送による申請も可能です。

郵送で申請する場合は、後述の必要書類を入れた封筒を管轄の法務局に書留郵便で送付します。

また自宅からのオンライン申請も可能です。申請を行うためには申請用総合ソフトが必要になります。オンライン申請の詳細は法務局の案内をご覧ください。

住所変更登記の必要書類

住所変更登記には以下の書類が必要です。

  • 登記申請書
  • 住民票の写しまたは戸籍の附票:住所変更の事実が確認できる書類

登記前に必要書類を準備しておきましょう。

ただし、転居を繰り返している場合、住民票や戸籍の附票だけでは住所の変遷を証明できないこともあるのでご注意ください。そのような場合は登記済証(権利証)や登記識別情報などを別途準備しなければなりません。

なお、郵送で申請する場合は登記完了証を送付してもらうための返信用封筒も必要です。

住所変更登記の費用

住民票の写しまたは戸籍の附票といった必要書類の発行には、1通あたり200〜300円かかります。また住所変更登記には「登録免許税」が発生し、登録免許税額分の収入印紙(コンビニ・郵便局などで購入)が必要です。登録免許税額は不動産(土地または建物)1物件につき、1,000円となります。 

郵送で申請する場合は書留となりますので、郵送基本料金(84円〜※重さによる)に480円の書留料金を加えた切手を準備します。返信用封筒にも切手を貼ることを忘れないようにご注意ください。 

住所変更登記の手順・流れ

  • ステップ1:必要書類を準備する
  • ステップ2:登記申請書を作成する
  • ステップ3:不動産を管轄する法務局に登記申請書を提出し、登録免許税を納付する

登記完了まで1週間程度はかかります。登記完了証の交付については法務省のページをご覧ください。

登記申請書は法務局に提出する前に、あらかじめご自身で作成しておく必要があります。 法務局の窓口で登記申請書の作成を依頼することはできません。登記申請書の作成にはある程度法的な知識が必要です。住所変更の登記申請について相談や作成を依頼したい場合は、司法書士に相談することも可能です。

氏名変更登記の手順・流れも基本的には住所変更登記と同じ

氏名変更登記に関しても、申請場所、費用や流れは住所変更登記と同様ですが、必要書類が異なるので注意しましょう。

  • 登記申請書 
  • 戸籍関係書類(戸籍謄抄本)
  • 住民票の写し
  • (郵送で申請する場合)登記完了証を送付してもらうための返信用封筒

登記官による「職権登記制度」も始まる

何らかの事情で、住所変更登記・氏名変更登記の義務を果たせないことも想定されます。住所変更登記・氏名変更登記手続きの合理化・簡素化を図り、申請義務の実効性を確保するため、2026年4月1日より法務局の登記官が職権で変更登記をする新制度も設けられます。この職権登記によって登記官が住所変更登記や氏名変更登記をしてくれます。

登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

法務省 改正不動産登記法 第76条の6

条文に「自然人」とありますが、不動産の所有者が個人(自然人)と法人の場合で職権登記制度の運用が異なります。

不動産の所有者が個人の場合

法務局では定期的に住基ネットで照会を行い、住所や氏名に変更が生じた場合に職権で変更登記を行います。

ただし、法務局が住基ネットで照会を行うための「検索用情報(住所、氏名、生年月日など)」の提出を事前に行っておく必要があります。改正法施行以降、新たに所有権の登記を申請する際に提供します。改正法施行時点で登記簿上の情報が最新で特に登記の必要がない場合は、任意での提出も可能となる予定です。 

なお、法務局が本人の了承を得ずに職権登記を行うことはありません。不動産の所有者の中には、DV被害・ストーカー被害などを受けていて登記簿上に住所が公示されることで危害を加えられるケースも想定されるためです。法務局から不動産の所有者に対して意思確認を行います。了承を得ることができてはじめて、職権で住所の変更登記を行います。

不動産の所有者が法人の場合

法務省内のシステム連携により、商業・法人登記上で法人の住所などに変更が生じたときは、登記官が職権で変更登記を行います。個人の場合のように意思確認を行うことはありません。

住所変更登記や氏名変更登記でお悩みなら司法書士にご相談

この記事のまとめ

  • 住所変更登記・氏名変更登記とは、不動産の所有者が登記簿上の住所や氏名を変更する手続きのこと
  • 住所変更登記と氏名変更登記を義務化する改正法は2026年4月1日から施行
  • 申請の期限は住所変更があった日から2年以内(施行日前の住所変更も遡及適用で対象。その場合は施行日から2年)
  • 正当な理由なく期限内に住所変更登記・氏名変更登記の義務を怠ると5万円以下の過料
  • 2026年4月1日より法務局の登記官が職権で住所や氏名の変更登記をしてくれる新制度が開始

住所変更登記・氏名変更登記は義務化されるので、お引越しやご婚姻などがありましたら、手続きを忘れないように注意しましょう。

住所変更登記・氏名変更登記に関わらず「登記」や「不動産の承継」でお困りなら、専門家である司法書士にご相談ください。司法書士に登記を依頼をすれば手数料はかかりますが、手続きを正確かつ迅速に進めることができ、書類の不備で何度も法務局に行くことになったり、法務局の開局時間に合わせて仕事を休んだりする必要もありません。

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この記事の監修者

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司法書士斉藤圭祐

ベストファーム司法書士法人 代表社員/相続・生前対策の専門家/相続手続き、生前対策、遺言書作成、家族信託、成年後見、不動産登記、商業登記、事業承継など幅広く対応しています。

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