現在増えつつあるのが、ご高齢になった方が名義を持つご自宅の空き家問題です。
ご自宅の名義を持ったまま認知症になってしまい、仮に高齢者施設へ入居されると、その後のご自宅の処分は非常に困難になります。所有者としてご自宅に関して権限を行使できるものが、実質、不在となるからです。そうなるとご自宅は放置され、固定資産税だけ払い続けなければならないという状況が生まれます。
認知症になった方は契約行為ができませんので、不動産を売却したり賃貸に出したりは厳しいでしょう。
そこで有効とされるのが
といった制度です。
一つのケースを想定して、それぞれの制度の特徴をみていきましょう。
ある親子のケース
父親は自身名義の自宅と賃貸アパートを経営している。父親自身は数年後に自宅を売却して高齢者施設に入ろうと思っているが、その前に認知症になってしまったら・・・という不安を抱えている。息子は遠方に住んでいるので、贈与してしまうと息子にも大きな負担がかかるかもしれないと悩んでいる。
生前贈与
元気なうちに(判断能力があるうちに)所有している不動産の権利を息子に無償で譲渡する制度です。
メリットとしては、不動産の所有権が完全に息子のものになるので、その後の手続きは全て息子が行い、その結果も息子に渡ります。父親が認知症になっても困ることはありません。
反面デメリットとしては、贈与税・固定資産税といった金銭的な負担を息子が負うことになります。また息子が遠方に住んでいる場合は不動産の管理そのものが困難なケースも多いです。
後見制度
後見制度は、本人に代わって後見人として選任された人が財産の管理を行う制度です。
メリットとしては、不動産の管理・保全を裁判所の監督のもと後見人に確実に行ってもらえます。
反面デメリットとしては、下記のような点があげられ、よく注意が必要です。
後見人が選任されるまで時間がかかるので、すぐに売却や賃貸契約等が結べない
後見開始までの時間は、法定後見で3~6か月が目安となりますので、その間は不動産についての手続きを行うことはできません。
親族が後見人となれるとは限らない
後見人は裁判所が選任しますので、親族の方がなれるとは限りません。このケースでは父親の意向を理解している息子が後見人になるのが理想ですが、裁判所の判断で息子が後見人には不適格とされると、全く別の、弁護士や司法書士といった専門家が後見人として選任されることになります。
後見人が就いたからといって不動産の売却ができるとは限らない
後見人の財産管理については家庭裁判所の監督、許可が必要です。
家庭裁判所は原則、「不動産を売らないと本人の施設費用が払えない、本人の生活費が足りなくなる」という本人のための合理的な理由がないと後見人が不動産を処分することに対して許可を出しません。
また、後見人が選任されたということは本人は判断能力を失っている状態なので、そこから息子に贈与や別会社へ譲渡することもできません。仮に「家族のため」になるとしても「本人のため」でないと判断されるからです。そのため、本人が亡くなって相続によって不動産の名義を引き継ぐまで、自宅が空き家となる可能性が高くなります。
家族信託
不動産の名義人である父親が、自身の判断能力があるうちに信頼できる親族に不動産の管理を託すのが家族信託です。
この制度を利用すると、
- 認知症になり後見人が選任された後でも先に結んでいた信託契約が優先されるので、信託していた不動産は裁判所の許可を得ることなく引き続き管理、処分を受託者(託された人)が行うことができる
- 不動産から出た利益(売却金等)は父親の資産となる
等のメリットがあります。
上記の「ある親子のケース」を例にしてみましょう。
家族信託として、不動産の管理について、
- 委任者(託す人)=父親
- 受託者(託される人)=息子
- 受益者(利益を受ける人)=父親
として契約したとします。
そうすれば、
(1) 自宅について
父親が認知症になり、高齢者施設に入居した後でも、息子が自宅の売却や賃貸に出す契約を結ぶことができるので、空き家として残ってしまうことを防ぐことができます。
(2) 賃貸アパートについて
自宅同様、息子が主体となって管理を行うので、不動産管理会社への委託や譲渡等の契約を息子が行うことができます。
また、(1)(2)共に、不動産から出た利益(売却金や家賃収入等)は父親の資産となりますので、父親の高齢者施設費用として使うこともできます。
また、家族信託により登記上の名義が代わりますが、信託による変更が明記されるので、贈与税や不動産取得税は発生しません。
いいことばかりの家族信託に見えますが、この契約を行うには信頼関係が非常に大切です。
「息子に任せるのはちょっと頼りない・・・」という方もいらっしゃるかと思いますが、そんな時はご自身が信頼できる方を同意者として設定することで、息子だけの判断で手続きを進めることを防ぐこともできます。
また、非常に広範囲に渡る内容なので、専門家を交えて契約内容を検討する必要があります。
まとめ
遺言では亡くなったあとの資産について指定はできますが、亡くなる前についても様々な制度を活用することで、不動産を有効活用できます。
少しでも心配事がある方は、ご自身に合った制度は何かを見つけるために、専門家の意見を聞いてみるのも良いでしょう。
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