はじめに
遺言書と言うと、何を書くものでしょうか?
大まかなイメージとしては
- 残された遺族に送る言葉
- 相続のこと
- 子供の養育などについての希望・要望
- お墓のこと
があると思います。最近ではペットについて書きたいと思っている人もいるかもしれません。
実は法律上、遺言書に書くと効果を生じる内容は決まっています。
ここでは主として民法に規定のある遺言事項について説明したいと思います。
なお、遺言を書き記した書面は、遺言書、遺言状とも言いますが、法律上の違いはありません。
遺言書でできることその1~相続に関すること~
相続人の廃除と廃除取消
遺言をするまでもなく、法律上の相続人は決まっています。基本的には順番に
(a)配偶者+子 ※配偶者がいない場合は子のみ。以下同じ
(b)配偶者+親(正確には直系尊属)※配偶者がいない場合は親のみ
(c)配偶者+兄弟姉妹 ※配偶者がいない場合は兄弟姉妹のみ
という組み合わせのどれかになります。
配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。
子がいる場合、(a)の組み合わせが適用されるので親は相続人にはなれません。
同様に子か親がいる場合、(a)か(b)の組み合わせが適用されるので兄弟姉妹は相続人になれません。
厳密にはこのほか代襲相続などもありますが、このように法律で決められた相続人を法定相続人と呼びます。
しかし、被相続人としては「あいつにだけは財産をやりたくない」という場合があります。虐待されたとか、重大な侮辱をされたとか、反社会的勢力に加入しているなどの場合です。
兄弟姉妹の場合は相続分をゼロに指定することで遺産の相続を阻止できるのですが、相続人が配偶者、子、親(正確には直系尊属)の場合は遺留分の規定があり、相続分をゼロにしても完全に遺産の相続を阻止できません。
そこで、役に立つのが「相続人の廃除」の規定です。
相続人の廃除をすれば、その人は相続人から外れます。つまり、遺産の相続ができなくなるのです。これは被相続人が生きているうちでもできますが、遺言書の中に記載しても効果があります。
但し、なんとなく気に入らないとか、家業を継がないからといった理由で廃除することはできません。そうした不合理な廃除を防ぐため、家庭裁判所の審判手続きで認められなければ廃除とはなりません。
このため、遺言書で廃除手続きをするためには被相続人(亡くなった方)に代わって手続きを行う遺言執行者を選任しておく必要があります。
廃除取消は、廃除の逆で、生前に廃除した人を相続人に戻すことです。これも遺言書に記載して行うことができます。
相続分の指定と指定の委託
上述のように、相続人は基本的に
(a)配偶者+子
(b)配偶者+親(正確には直系尊属)
(c)配偶者+兄弟姉妹
という組み合わせのいずれかになります。(a)の場合、配偶者が遺産の1/2を相続し、残りを子が相続します。このようにケースごとに法律で相続分が決まっており、これを法定相続分と言います(下図)。
なお、子や親(下図の「父母」)、兄弟姉妹が何人いても配偶者の取り分は変わらず残りは人数分を均等に分配します。
例えば、長男、長女、次男がいる場合、法定相続分は
となります。
遺言書ではこの割合を個別に変更できます。
例えば、
- 配偶者 1/3
- 長男 1/3
- 長女 1/6
- 次男 1/6
という具合です。
ただし、遺留分の滅殺請求をされるとその部分で遺言の指定の通りはいかなくなります。遺留分は法定相続分の1/2または1/3です。この点については別稿「遺言の注意点 遺言と遺留分について」で説明します。
また、相続分の指定は遺言者本人が行わなくてもよく、遺言書の中で別の人物に委託することも可能です。
遺産分割方法の指定および指定の委託
遺産は金銭だけとは限りません。住宅などの不動産や株式などもあり得ます。
これを例えば、「不動産については長男に、現金については配偶者に」相続させるというのが遺産分割方法の指定です。
一般的には遺言書本文に財産目録を添付し、遺言書本文で、財産目録の各項目について相続人の誰それに相続させると指定します。
あるいは、住宅などの不動産は売却し、その金額を相続人の誰それに相続させるという書き方も可能です。
これら遺産分割方法の指定は遺言者本人が行わなくてもよく、遺言書の中で別の人物に委託することも可能です。
遺産分割禁止
遺産分割禁止を遺言書の中で規定することもできます。
相続人が複数いてそれなりの財産がある場合、遺産分割方法の指定などを行わないと遺産は遺産分割協議により分割されます。
ただ、相続時の相続人の年齢や立場はさまざまです。例えば、未成年の相続人は直接には遺産分割協議に参加できません。
このように、相続開始時に遺産分割協議が始めるのは不都合だと被相続人が感じた場合、遺産分割禁止を遺言書の中で規定することもできるのです。
もっとも、遺産分割が長い期間できないといろいろ不都合が生じるので、禁止期間は5年までと定められています。
なお、遺産分割の禁止は遺言書の中でしかできません。生前に「私が死んでも3年間は遺産分割するなよ」と言っていても法的な効果はありません。
遺贈
相続では法律で定められた人(法定相続人)にしか財産が相続されません。
ただ、それ以外にも、世話になったなどの理由で財産を贈りたい場合もあります。
そこで使えるのが遺贈です。
遺贈する相手は自然人に限らず法人でも構いません。
なお、死亡時に財産を贈る方法としては死因贈与という方法もあります。
これは生前に受贈者(贈与を受ける相手)と契約を結んでおき、死亡した際、その契約の効力として財産を贈るものです。これに対し、遺贈は、遺言書の中で記載するだけで可能です。
なお、法定相続人に対して遺贈をすることもできます。
また、いずれにせよ、法定相続人がいるのに全財産を誰それに遺贈するという場合、法定相続人の遺留分を冒す可能性があります。その場合には、受贈者は遺留分減殺請求(遺留分を冒す部分を返せという相続人からの請求)を受ける場合もあります。
遺言書でできること2~認知に関すること~
認知とは、嫡出でない子(非嫡出子)について親子関係を認めることです。
もちろん、生前でもできますが、遺言書の中で記載することでも可能です。
遺言書でできること3~その他
未成年後見人・未成年後見監督人の指定
未成年後見人は、親権者と同一の権利義務を持ちます。
若くても病気がちの女性や高齢男性など、先行きのどこまで生きながらえるか不安な方に未成年の子がいるケースもあるでしょう。
こうした方々が亡くなると他の親(元配偶者)や他の親族が未成年の子の未成年後見人になる可能性が高いのですが、それがイヤな場合は遺言書で未成年後見人を指定することができます。後見監督人は後見人を監督する人です。
もっとも、遺言書での指定は親権者変更の申立で覆すこともできるので、実質上、未成年後見人・未成年後見監督人の指定は取り敢えずの期間について効果があるにとどまります。
祭祀主宰者の指定
民法には
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
という規定があります(民法第896条第1項)。
つまり、祭祀(さいし)財産は一般的な相続財産とは別扱いというのが民法の規定です。
このため、祭祀主宰者が亡くなった場合、その遺言書で次代の祭祀主宰者を指定することができます。
遺言執行者の指定および指定の委託等
遺言では、遺言した方が亡くなった後に処理が必要なことがほとんどです。
そのため、遺言事項の執行をする人が必要になることがあります。これが遺言執行者です。
遺言書中でその指定をしたり、指定を委託することができます。
その他
細かい話なので詳細は省略しますが、以上のほか、遺言書で
- 特別受益の持戻しの免除(903条3項)
- 相続人間の担保責任の定め(914条)
- 遺贈の減殺の方法(1034条)
を規定することもできます。また、民法以外では信託の設定ができることも重要です。
条件付遺言
上記に共通して言えることですが、遺言の内容に条件を付けることもできます。但し、公序良俗に反する条件や具体性のない条件は付けても無効です。
まとめ
遺言書でできることはさまざまですが、多くの場合、遺言事項を実現するためには遺言執行者が必要になります。
遺言執行者は遺言書中でも指定できますが、生前から司法書士など専門家に依頼すれば、遺言の執行がかなり楽になります。
遺言書の作成や管理も含めて依頼するのが賢い選択と言えるでしょう。
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