介護施設を利用しようと考えてパンフレットやWebページなどを見ていると、「身元引受人が必要」と記載されていることがあります。この場合、身元引受人が用意できないと希望する介護施設に入居できないこともあるため注意が必要です。
この記事では、身元引受人の役割や、身元引受人を依頼できる人がいない場合の対処方法を詳しく解説していきます。希望する施設で身元引受人が必要な場合など、実生活でぜひ役立ててください。
そもそも身元引受人とは
身元引受人とは「身柄を引き取る責任を持つ人」のことです。法的な用語ではありません。身元引受人は介護施設に入居する際に必要です。
介護の場では高齢者を相手にするため、若い年代と比較して病気や事故などが起きる可能性が高いです。
それゆえ介護施設側は危機管理を行っていかなければなりません。介護における身元引受人とは、万が一入居者が亡くなった場合、その後の対応を引き受ける人のことをいいます。
ちなみに警察署に身柄を拘束された人を迎えに行き、その後も罪証の隠滅や逃亡などをしないよう監督する人のことも身元引受人と呼びますが、この記事では介護における身元引受人の解説を行います。
身元引受人の役割や責任について
介護における身元引受人の主な役割は以下のとおりです。
- 緊急連絡先に登録して緊急時に連絡を受ける
- 治療方針の相談や入院手続き、通院や入院中に適切なサポートを行う
- 施設退去時にサポートを行う
- 入居者が亡くなったときに身柄を引き取る
一般的には身元引受人は上記のような役割に対して責任をもつことになりますが、法的に定められた責任ではないので、介護施設によって違いがあります。
施設によっては、後述する「身元保証人」と区別されていないことがあるので、注意が必要です。そのため、入居の際の契約書上で身元引受人の責任の範囲を確かめる必要があります。
身元引受人を用意できないと利用できない施設もあるため、あらかじめ確認が必要です。こういった身元引受人を要求する介護施設は少なくありません。
身元引受人を引き受ける側のリスクはある?
身元引受人を引き受ける側にもリスクはあります。例えば、金銭的負担や各種手続きの対応を迫られるといったリスクです。
介護施設によっては、前述した通り、保証人と身元引受人が区別されずに使われている傾向があります。
施設の利用料の残債がある場合などの金銭的負担は、身元引受人の責任ではないように思われますが、契約内容に債務の保証人とする取り決めがあると請求されることになります。
身元引受人として求められる役割が何なのか、契約書をしっかりと読んで引き受けるか判断しましょう。
「名前を貸すだけだろう」と安易な考えで身元引受人を受諾してしまうと、内容が身元保証契約だったり、連帯保証だったりと後になって予想外のトラブルが発生するリスクがあります。
身元引受人と 「連帯保証人」「身元保証人」「成年後見人」との違い
身元引受人と連帯保証人・身元保証人・成年後見人は、高齢者施設などでは混同して使われがちな用語です。しかし、法律上の役割や権限などはそれぞれ違います。
ここで、それぞれの違いを理解して契約時に確認し、身元引受人が追う責任を明確にしておきましょう。
連帯保証人とは
連帯保証人は、返済が滞った場合などに本人に代わって債務の返済を行う人のことをいいます。
施設における連帯保証人の場合、施設入居者が賃料や施設の費用・返済などを支払えなくなったときに施設入居者に代わって支払いを行う人を指します。
連帯保証人の場合は発生した損害や債務を事前に定めた極度額(上限額)の範囲で賠償しなければいけません。連帯保証人は本人の資力の有無にかかわらず、全額を返済する重い責任を負います。
身元保証人とは
身元保証人は、病院の入院時・介護施設の入居時などに身元を保証する人のことです。身元保証人も連帯保証人と同様に本人に代わって極度額(上限額)の範囲で損害や債務の賠償を負います。
また本人に代わるケアプランや医療行為への同意、トラブル時の対応を行うことなど様々な役割が求められます。
ほかにも、本人が亡くなった場合の身柄引き取りも行います。身柄引き取りは身元引受人と共通する役割です。
身元引受人と身元保証人の両方が必要な場合はそう多くはありませんが、もし両方いる場合は、どちらが遺体を引き取るのかについて協議して決定することになるでしょう。
身元保証人の責任の範囲は広く、責任が重くなりすぎる可能性があるため、期限が法律で定められていたり、裁判所による制限に関する規定があったりします。
成年後見人とは
成年後見人は、本人が認知機能低下などで適切な判断ができなくなった場合に、本人の財産管理および身上監護(生活環境を整えるための法的手続き)を代理をする人のことです。
家族が後見人の場合は除き、後見人は連帯保証人や身元保証人のように債務の保証までは行いません。また、財産管理や身上監護が役割なので、救急時の駆けつけや退院時の付き添いの義務もありません。
成年後見人には「法定後見人」と「任意後見人」の2種類があり、後見人の選任方法や後見開始の時期などが異なります。
友人にも依頼は可能?身元引受人になれる人の条件
身元引受人は、万一の時に駆けつけができる距離に住む親族がなるのが一般的です。ただし、適当な親族がいない場合は、親友や親しい知り合い、専門の保証会社に依頼するケースもあります。
友人や知人を身元引受人にできるかどうかは介護施設が判断します。まずは介護施設に友人や知人を身元引受人にできるか確認しましょう。
また、施設によっては、住んでいる場所(施設からの距離)・収入・年齢・親族関係など身元引受人になれる人の要件が定められていることもあります。
なぜなら、施設側としては、速やかかつ適切に対応してくれる人に身元引受人を引き受けてもらいたいからです。
親族よりも頼れる友人に身元引受人になってほしいと希望していても、施設側が「親族に限る」という条件を設けている場合は諦めざるを得ません。その場合は、友人でも身元引受人になれる施設を探すしかないでしょう。
おひとりさまで親族や知人、友人など頼れる方がいない場合は保証会社の利用を検討します。施設側に保証会社が利用できるか確認しておきましょう。
身元引受人を巡るトラブル例や予防(対処)方法について
ここからは、身元引受人を巡るトラブル事例や、その予防・対処方法について個別に解説します。
事例1:家族や親族はいるが身元引受人になれる人がいない
身元引受人を求める施設側としては、緊急時に身元引受人と連絡が取れないと困ります。
そのため、遠方に住んでいること、親族や家族が高齢なことなどを理由に、家族や親族がいても身元引受人になれる人がいないというケースも考えられます。
そのような場合には、後述する家族や親族がおらず、身元引受人がいない場合と同様の対処法を検討しましょう。
事例2:身元引受人を変更しないといけなくなった
施設入所後に身元引受人を変更せざるを得なくなるケースもあります。
- 身元引受人になってくれた友人や知人と疎遠になった
- 身元引受人が高齢になった
- 身元引受人が遠くに引っ越した
- 身元引受人の資産状況が悪化した
上記のようなケースでは、施設から身元引受人の変更を求められるかもしれません。急に身元引受人を変更しろと言われてもすんなり見つかるとは限らないので、あらかじめ予防策を練っておくことが重要です。
具体的には、身元引受人の変更の必要性に備えて民間の保証会社の利用を検討しておくといった予防策が考えられます。
事例3:保証会社にかかる費用が高額で支払えなくなった
保証会社を利用して身元引受人を立てていたものの、途中で資金が尽きて解約せざるを得なくなることもあります。
保証会社を利用する際は、入念な資金計画を立てるのが普通です。しかし、保証会社のなかには、契約中のプラン外のサービスを受けようとすると追加で高額な費用を支払わなければならないところもあります。
資金計画を破綻させないためにも、保証会社を利用する場合は、契約プランに含まれているサービスの範囲と追加費用の有無を事前に確認しておきましょう。
事例4:契約時に約束されていたサービスが提供されない
保証会社を利用するケースで、契約内容通りのサービスが受けられないといったトラブルも発生しています。
たとえば、契約書上に記載されているサービスの提供を拒否されたり、勝手に契約内容を変更されたりといったものです。
契約前に利用者の口コミなどを調べて、過去にそのようなトラブルが起こっていないか確認しておくことをおすすめします。
また、契約書は必ず控えをもらっておき、いつでも契約内容を確認できるようにしておいてください。
契約書の控えがあれば、それを根拠としてサービスの改善や提供を求められますが、控えがないとなると「言った・言わない」の泥沼論争になって労力ばかりかかります。
事例5:保証会社が倒産してしまった。返金がない。
身元引受人を依頼していた保証会社が経営難に陥って最終的には破産してしまい、事前に預かっていた預託金も利用者に返金しなかったというトラブルがありました。
契約前に、施設でその会社の評判を聞いたり、経営実績、経営母体などを最低限でも調査したりして、悪質な保証会社を選ぶ確率を下げることができます。
身元引受人を誰にも依頼できない場合の対処法は?
身元引受人がいないと施設に入居できない場合にはどうしたら良いのでしょうか。親族や友人がいても依頼できないケースや、そもそも親族や頼れる友人がいないケースが考えられます。
ここではそれらのケースにおける対処方法を紹介していきます。
方法1:成年後見人がいれば利用できる施設を探す
身元引受人になってくれる方が見つからない場合でも、成年後見人がいれば施設の利用が認められるケースがあります。
成年後見制度には、判断能力が既に不十分な人を保護する後見人を家庭裁判所が選任する法定後見制度と、判断能力が衰えない備わっているうちに本人が後見人を指定しておく任意後見制度があります。
成年後見人がいれば本人に代わって入居費用の支払いといった財産管理などをしてくれるため、施設側も安心です。
ただし、成年後見人は原則として身元引受人・身元保証人にはなれないため注意が必要です。後見人が身元保証人になった場合、代理人が後見人になってしまい、自分自身で身元の保証を行うということになり、矛盾が生じます。
たとえば、成年後見人が身元引受人・身元保証人として被後見人の債務を保証する場合、被後見人の代わりとして財産を守るべき成年後見人が、本人のお金を立て替えた保証人として、本人にお金の請求をするという利益相反が生じる可能性があるため、身元引受人や身元保証人は後見人以外から探さなければなりません。
すでに成年後見人はいるものの身元引受人が見つからないという場合には、成年後見人がいれば利用できる施設を検討してはいかがでしょうか。
成年後見人については、地域包括支援センターや各自治体に相談窓口があるため、利用を検討してみるのも良いでしょう。
メリット
成年後見人がいれば利用できる介護施設があるなら、成年後見人に財産管理や身上監護を任せつつ、施設に入所することができます。
近年では親族以外にも弁護士や司法書士といった専門職が成年後見人に専任される事例が増えています。施設入居中も財産や契約のことは豊富な法律知識や経験に基づいて対応してもらえるので安心です。
デメリット
そもそも成年後見人がいれば利用できる介護施設数が少なく、もし入居するとなれば希望する地域や条件で施設に入居することができない可能性があります。施設探しにも苦心することになります。
方法2:身元引受人が不要な介護施設を探す
介護施設によっては、身元引受人を必要としないところもあります。どうしても身元引受人を用意できない場合は、身元引受人を必要としない介護施設の利用を検討してみるのが良いでしょう。
メリット
身元引受人が不要な介護施設を利用するなら、身元引受人を探す手間が省けます。親族や友人・知人に身元引受人という責任を負わせなくて済むだけに、本人の精神的負担は軽くなるでしょう。
また、保証会社や専門家に依頼する必要もないため、経済面に不安がある人でも利用しやすいというメリットもあります。
デメリット
身元引受人を用意する必要がない点は魅力的ですが、こちらも利用できる施設が限られる可能性があるため注意が必要です。
また、身元引受人の必要がない場合にも、実際には後見人制度のサポートや連携する保証会社の紹介・身元保証のサービスを行って費用に上乗せしているケースも多く見られます。
身元引受人がいない場合の代替案を用意している介護施設も多くあるので、あきらめずに相談してみるのもひとつの方法です。
方法3:保証会社にお願いする
身元引受人がいないのであれば、保証会社に身元引受人の代行を依頼する方法があります。弁護士や司法書士などと連携している保証会社であれば、より安心して依頼できるはずです。
料金の目安は100万円前後とされていますが、あくまでも目安です。保証会社や利用するサービス内容によって料金が変わるので、依頼を検討する際は見積りをとるなどして事前に金額を確認する必要があります。
保証会社の主なサービス内容は下表をご覧ください。
主なサービス |
サービスの内容 |
保証人や身元引受人の受託 |
- 老人ホームや介護施設の入退所・病院の入退院の手続き代行
- 老人ホームや介護施設・病院などの費用の連帯保証人になる
- 退去時や死亡時の身柄引受を行う
|
生活事務サポート |
- 役所などで行う手続きのサポートを行う
- 老人ホームや介護施設との打ち合わせなどを行う
- 本人のケアプランや病院の治療方針などの場に同席する
|
任意後見サポート |
- 預貯金等の入出金に関する財産管理や金融機関との取引、保険・医療・介護等の契約代行
- 施設入退去契約の代行
- 後見監督人への報告などを行う。
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エンディングサポート |
- 葬儀や納骨など本人の希望を生前に聞いておき、希望通りに行う
- 喪主の代行や、遺族への連絡を行う
- 死後の行政手続きや、生前に本人が契約していたものの解約手続きを行う
- 家財処分などを行い、整理する
|
メリット
保証会社を利用すれば、頼れる親族や友人が周りにおらず身元引受人を用意できなくても、施設に入居できます。わざわざ成年後見人がいれば利用できる施設や身元引受人を用意しなくても利用できる施設を探す必要もありません。
親族や友人がいても、厚意で「身元引受人になってもらっている」という精神的な負い目があると、たとえ些細な要求であっても伝えづらいものです。
親族に頼みにくくても、保証会社ならサービスとして割り切れるので要望を伝えやすいというメリットもあります。
また、保証会社を利用することで親族の負担を減らすことができるというのも、大きなメリットです。信頼できる保証会社や専門家に依頼しておけば、親族の肩の荷もおります。
ただし、保証会社や専門家への依頼には少なからず費用がかかるため、同一家計の親族がいるならば、支払いについて了承を得ておく必要があるでしょう。
それに、保証会社は倒産しない限り「永続性」があります。身元引受人を引き受けた方が高齢になると責務を担うのが困難になったり、亡くなって身元引受人が不在になったりする可能性もあります。
保証会社に身元引受人を依頼すれば、社内で案件としてきちんと管理されます。永続性があるので身元引受人が不在になる心配はありません。
デメリット
施設入居の際に保証会社の身元引受人サービスを利用するデメリットのひとつとして、費用がかかるという点が挙げられます。
サービスを受ける以上はある程度の出費は当然、と思われるかもしれませんが、行き当たりばったりで保証会社を選んでしまうと悪質な業者を選んでしまい、不当に高額な費用を請求される事態に陥ってしまうかもしれません。
また、高額な費用を支払ったにもかかわらず質の低いサービスしか受けられないという事態を避けるためにも、保証会社選びには細心の注意を払いましょう。
失敗しない保証会社の選び方
満足できる身元引受人サービスを受けるためには、保証会社の選び方が大事です。保証会社を選ぶ際は、次のポイントをしっかりとチェックしてください。
サービス内容 |
- 身元引受人に求められる役割をまんべんなく扱っているかどうか(身元引受人の責任を果たせるサービス内容になっているかどうか)
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費用 |
- サービスの内容が費用に見合っているかどうか。
- 安さには安いなりの理由が隠れていることがほとんどなので、費用が安いだけで即決しないように注意が必要
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評判 |
- 実際に利用した人の口コミを見て、不安に思う部分はないか
- 特に大切なのは、入居する施設の評判です。保証会社の対応が悪いと実は施設側が迷惑することも多く、サービスがしっかりしている保証会社は施設側の評判も良いことが多いで
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運営母体 |
- 大きな会社や、社会的な信頼度の高い法人が運営しているか、何年経営を継続できているか。
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預託金の管理方法 |
- 預託金が会社のお金とは別の口座で管理されているかどうか(信託口座で預託金が管理されているのが望ましい)
- 預託金が簡単に流用されない仕組みが採用されているかどうかについて、保証会社との相談時に直接担当者から説明を受けるのが安心
|
また、契約を結ぶ際は、事前に契約書案を書面でもらっておき、内容を精査しましょう。締結後の契約書の控えをもらって保管しておくことで、後々のトラブル発生時にスムーズな対処が可能になります。
『全国シルバーライフ保証協会』の身元保証サービスについて
希望する有料老人ホームや高齢者介護施設、サ高住などに入所するためには、身元保証人・身元引受人が必要となります。
全国シルバーライフ保証協会では、入居・入院の際の身元保証や生活サポート・任意後見のサポートや通夜・お葬式などのエンディングサポートといった、高齢者の生活支援サービス「オーカスタイル」を提供しています。
弊協会は、司法書士などの士業法人グループが母体となっており、身元保証人・身元引受人を依頼する際に安心できるのもポイントです。
身元保証人・身元引受人だけでなく、連帯保証人にもなることで、希望する施設に安心して入居することができ、その後の生活を安心・安全で充実したものになるようにご支援しています。
また、弊協会では、預託金を信託口座で管理しており、預託金が運用資金など別の用途で流用されることはありません。
また、万が一倒産したとしても、信託口座の預託金は守られます。金銭面での不安を解消できる仕組みを採用しているので、安心して身元引受人をご依頼いただけます。
もしも身元保証人・身元引受人になってくれる方が見つからず困っているのであれば、ぜひ全国シルバーライフ保証協会の利用をご検討くださいませ。皆様の希望に合ったプランもご用意いたします。
死後事務委任契約施設入居の身元保証
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まとめ 身元引受人が必要なケースは保証会社の利用も視野に
身元引受人を必要とする介護施設は多く、身元引受人がいないと希望する施設に入所できなくなる場合があります。
身元引受人がいらない施設を探すことも可能ですが、入所できる施設の選択肢が限られます。身元引受人の用意が難しい場合は、保証会社の利用を検討してみましょう。
死後事務委任契約施設入居の身元保証
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