老人ホームに入りたいけれど「費用がどのくらいかかるのか心配…」「自分の年金だけで払えるかどうか分からない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
「老人ホームに入るには高額な費用がかかる」という言葉を耳にするかもしれませんが、公的施設と民間施設ではかかる費用に差があります。
また実際のところ、何にどのくらい費用がかかるのか、その内訳まで詳しく知っている人は少数かもしれません。
そこでこの記事では、老人ホームの入居を検討しているものの、費用が払えるかどうか心配な人向けに、有料老人ホームの平均利用額をはじめ、入居一時金の平均額や費用の内訳、費用が払えなくなった場合の対処法などを解説していきます。
費用が高くて払えない?有料の老人ホームの平均利用額は?
老人ホームとは、介護施設のうち「高齢者に対する介護サービスを備えている施設全般」を指し、その中に有料老人ホームも含まれます。
また、老人ホームは大きく以下の2つに分かれます。
公的施設 |
ケアハウス
特別養護老人ホームなど |
民間施設 |
介護付き有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅
グループホームなど |
社会福祉法人や地方自治体が運営する「公的施設」の費用は、比較的リーズナブルです。しかし民間企業が運営する「民間施設」の費用は、事業者によって大きく異なり、中には非常に高級な老人ホームもあります。
厚生労働省の資料※によると、有料老人ホームの利用料金総額の平均は18万9,982円となっています。この利用料金総額とは、「家賃+共益費+基本サービス相当費+食費+水道・光熱費」を含んだものです。
仮に要支援・要介護の状態となり、介護サービスを希望する場合は、上記にプラスして介護サービスの利用料金がかかるでしょう。
では有料老人ホームに入居すると、他にどのような費用がかかるのか、内訳について詳しく解説していきます。
※「サービス付き高齢者向け住宅等の月額利用料金」
有料の老人ホームの費用内訳は?相場はいくら?
有料老人ホームの利用料金総額の平均は約19万円でしたが、主な内訳として家賃、共益費、基本サービス相当費、食費、介護保険料や医療費、その他の雑費があります。
株式会社野村総合研究所が平成27年に公表した「高齢者向け住まいが果たしている機能・役割等に関する実態調査」を参照しながら、それぞれの内訳を見ていきましょう。
老人ホームの費用①:家賃
月額利用料金のうち、介護付き有料老人ホームの家賃の平均は7万5,601円。住宅型有料老人ホームの平均は3万8,689円という結果でした。
この数字は前払い金を設けていない施設のみの金額であり、前払い金を設けている場合の介護付き有料老人ホームの平均は月5万9,868円。住宅型有料老人ホームの平均は4万408円です。
ちなみに前払い金とは、入居時に支払うお金のことで、入居一時金(後述)とも呼ばれています。入居時にまとめて支払うため、前払い金が多いと月々の利用料金を安く抑えられます。
老人ホームの費用②:共益費
介護付き有料老人ホームの共益費相当額の平均は5万3,355円。住宅型有料老人ホームは2万1,094円です。
介護付き有料老人ホームの「共益費相当額」とは、マンションの共益費に類似した費用です。建物の維持、共用部分の水道光熱費や管理のために必要なお金以外にも、施設職員の人件費が含まれることがあります。
介護付き有料老人ホームのほうが住宅型有料老人ホームよりも高額なのは、「人件費の負担が大きい」という理由もあるのではないでしょうか。
老人ホームの費用③:基本サービス費相当額
介護付き有料老人ホームの「基本サービス費相当額」の平均は1万2,573円。住宅型有料老人ホームの平均費用は5,832円です(介護保険1割負担は除く)。
基本サービス費相当額には、一般的に生活支援やスタッフによる健康管理、受ける介護サービスに応じた費用が含まれますが、入居者の要支援・要介護の認定内容によっても異なります。
介護保険法で指定された基準を満たしている介護付き高齢者ホーム「特定施設(特定施設入居者生活介護)」に入居した場合、要介護度によって以下のように月額の自己負担額が決められています。
要介護度 |
1割負担 |
2割負担 |
3割負担 |
要支援1 |
5,460円 |
10,920円 |
16,380円 |
要支援2 |
9,330円 |
18,660円 |
27,990円 |
要介護1 |
16,140円 |
32,280円 |
48,420円 |
要介護2 |
18,120円 |
36,240円 |
54,360円 |
要介護3 |
20,220円 |
40,440円 |
60,660円 |
要介護4 |
22,140円 |
44,280円 |
66,420円 |
要介護5 |
24,210円 |
48,420円 |
72,630円 |
※出典URL:厚生労働省「介護報酬の算定構造」
ただし居住地域によって、自己負担額は異なる可能性があります。
老人ホームの費用④:水道・光熱費、食費
介護付き有料老人ホームの平均の水道・光熱費は6,500円、住宅型有料老人ホームは5,397円という結果でしたが、施設や運営会社によっては、水道光熱費が管理費に含まれているケースもあります。
大半の介護付き有料老人ホームでは、固定費として毎月一定額を支払うパターンが多いようです。
また、介護付き有料老人ホームの食費の平均(3食を30日間提供した場合)は4万9,611円、住宅型有料老人ホームの平均は3万8,943円でしたが、食費には食材費とは別に厨房維持管理費が含まれることもあります。
老人ホームの費用⑤:介護保険料や医療費、その他の雑費
上記の費用以外に介護保険料の負担額や医療費をはじめ、消耗品、嗜好品、洋服代といった雑費はすべて自己負担です。個人差はあるものの、月3〜5万円はプラスで見込んでおくとよいでしょう。
なお、消耗品にはティッシュ、石鹸、歯ブラシ、歯磨き粉、シャンプーなどがあり、入居者や家族が用意する場合もあれば、施設が補充した後、費用を請求されることもあります。オムツを使用する場合は、別途オムツ代もかかります。
理容師・美容師の定期訪問や、自由参加の有料イベント(陶芸やヨガなど)に参加する際も費用が発生するでしょう。
老人ホームの「入居一時金」とは?費用の平均額はいくら?
先述した入居一時金について、より詳しく解説します。
入居一時金には「家賃の前払い」という意味合いがあり、この前払い金は、終身にわたって居住することを想定して支払うお金です。
老人ホームでの契約は、「居室や共用スペースの利用などを終身にわたり利用できる権利を取得する」という「利用権方式」が一般的です。
そのため、有料老人ホームに入居する場合は、「利用権を前もって取得する」という意味合いで、原則前払い金を支払うケースが多いでしょう。
前払い金は、「①想定居住期間における家賃」+「②想定居住期間を超えた期間に備えた家賃(将来の家賃負担)」から構成されており、想定居住期間を超えずに退去する場合は、残りの金額を返金してもらえます。
先述した株式会社野村総合研究所の「高齢者向け住まいが果たしている機能・役割等に関する実態調査」によると、介護付き有料老人ホームの平均の前払い金は392万2,494円で最大値は6,000万円。住宅型有料老人ホームの平均は51万5,316円で最大値は5,320万円です。
入居一時金が安い場合は月額利用料の設定額を上げているケースが多いので、入居一時金の額だけではなく、総額で判断する必要があるでしょう。
また、入居一時金がない老人ホームに入居する場合は、入居時に「敷金」が別途必要となり、月々の利用料金も高くなるのが一般的です。
このように相場はピンからキリまであります。入居前にしっかり調べておきましょう。
以下のサイトは老人ホームや介護施設のポータルサイトで、老人ホームを検索する際に入居費などの「費用」で絞込検索をすると、あなたの予算に合った老人ホームが見つかるでしょう。
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受給できる年金が少ない!?安い費用で入居できる老人ホームは?
先述したように、老人ホームは大きく社会福祉法人や医療法人、地方自治体が運営する「公的施設」と、民間企業が運営する「民間施設」に分かれます。
上記で紹介した月額利用料金は、民間企業が運営する有料老人ホームです。一般的に民間の有料老人ホームは費用が高く、運営会社によっても差が生じます。
その点、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院といった公的施設は、民間施設よりも費用を安く抑えられるでしょう。
たとえば特別養護老人ホームは、基本的に要介護度3以上の高齢者が入居できる施設で入居一時金は不要です。
前年度の個人収入(年金)や、住環境の違いなどによって自己負担額は変わりますが、たとえば要介護5の人が多床室(他の入居者と共同生活する部屋のタイプ)を利用した場合の月額利用料はおよそ10万円(施設サービス費の1割・居住費・食費・日常生活費)です。個室の場合は、費用が上乗せされます。
ほかにも、軽費老人ホーム(A型、B型、都市型軽費老人ホーム、ケアハウス)は入居一時金がかかるケースはあるものの、比較的安い月額利用料で入居できます。収入額に応じて負担額は月4〜15万円と幅があります。
生活保護でも老人ホームに入れる?利用額は0円!?
仮に受給している年金が少なく、生活に困窮している場合は、条件次第で生活保護を申請できます。生活保護が認められれば、家賃扶助や生活扶助などを受けられるため、有料老人ホームの費用をまかなえる可能性があるでしょう。
扶助の金額は収入、世帯の人数、居住している市区町村などによって変わりますが、家賃扶助と生活扶助を合わせて月8〜13万円が多いようです(詳細は居住地域の市区町村にお問い合わせください)。
ただし有料老人ホームは民間施設なので、生活保護者を受け入れていないケースもあります。
一方、特別養護老人ホームや軽費老人ホームは公的施設なので生活保護を受けていても申請可能ですし、介護扶助の対象となり、要介護度に応じた限度額以内であれば無料で利用できるでしょう。
毎月の利用料金が負担に!?老人ホームの費用が払えない場合は?
有料老人ホームへの入居後に収入の状況が変わり、「毎月の利用額を支払えなくなった…」ということは誰にでも起こる可能性があります。
たとえば、有料老人ホームの費用として老後資金を貯めていたにもかかわらず、家族が別の用途で使い込むケースがあるかもしれません。
仮に月額利用料を支払えなくなっても、即退去を迫られることはまずありません。多くの施設では、1〜2カ月ほどの猶予期間を設けています。
また入居者本人が月額利用料を支払えなくなった場合は、身元引受人(連帯保証人)が代わりに支払うことになります。
ちなみに有料老人ホームへの入居時に身元保証が求められ、契約時には身元引受人が必要になりますが、身寄りがいないケースもあるでしょう。
その場合、保証会社などの法人(株式会社、一般社団法人やNPO法人など)と契約して身元保証人制度を利用することも可能です。本人の財産管理や、費用の支払い代行に対応している法人もあります。
身元保証人も月額利用料を支払えない場合は再び退去勧告を受けますが、保証会社などの法人であれば、預託金に基づいて費用を支払うので安心感があるでしょう。
「どうしても費用を支払えない」と分かったら、その時点で施設のケアマネジャーに相談し、今より安価な施設を紹介してもらうなど、早めに行動することが大切です。
まとめ 資産管理や終活でお困りなら専門家に相談してみよう
老人ホームには民間施設と公的施設があり、施設ごとに費用も幅があります。ただし、公的施設は人気が高く、確実に入居できるとは限りません。民間施設でも比較的リーズナブルな月額料金で利用できるところもありますが、入居一時金が高額になるケースもあります。
老後資金のすべてを入居一時金に回してしまうと、受給する年金額だけでは支払いが厳しくなるかもしれません。有料老人ホームに入居する前に、お金のやりくりに関してはしっかり検討しておきましょう。
検討した結果、有料老人ホームに入居できるだけの資産があると分かったものの、「身元引受人がいない」「自分で資産管理できない」「入居時の手配が面倒」「生前整理を手伝ってほしい」など困っていることがあれば、専門家に相談してみるのも一案です。
全国シルバーライフ保証協会では、財産管理や任意後見、本人が希望するお葬式などを実行するための手配といった終活サポートも行っています。
まずは気軽に相談してみてはどうでしょうか。
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