アントニオ猪木や桑田佳祐といった有名人が生前葬を行い、生前葬が注目され始めました。皆さんも気になりますよね。ここでは、生前葬を行う意義や生前葬を行うことで得られるメリット、生前葬にかかる費用などについて詳しく解説しています。
なぜ「生前葬」を行うのか?理由を解説!
まずは生前葬の意義や、生前葬を行う理由について解説します。
生前葬を行う意義と理由について
生前葬とは生前に執り行う葬儀の一種で、送られる本人が葬儀を催したり、本人の了承を得て家族らが葬儀を主催したりします。生前葬の目的は、本人からお世話になった人などへと感謝の気持ちやお別れのメッセージを直接伝えることです。
生前葬を行う動機は人によってさまざまですが、たとえば、病気が判明している場合に「元気なうちに感謝の気持ちを伝えたい」との動機から生前葬を行う人もいれば、「人生の節目に親族が集まる機会を設けたい」と考えて生前葬を行う人もいます。
また、生前葬には、葬儀を通じて、人生という名の劇場の幕を一旦下ろし、人生の最終章の幕開けを迎えようという「長生きのお祝い」的な意味も含まれているとされています。
生前葬は歴史の浅い行事だと思われがちですが、実は江戸時代にも生前葬が行われた記録があるなど、長い歴史を持っています。
生前葬のメリット・デメリット
生前葬のメリット・デメリットをいくつか紹介します。
生前葬のメリット |
生前葬のデメリット |
・自分で葬儀内容を決めやすい(時間や場所の制約が少ない)
・葬儀に本人の人柄や趣味嗜好を反映できる
・大切な人へ本人から直接感謝のメッセージを伝えられる |
・一般的な認知度が低いため、事前に趣旨を説明しておかなければ招待する相手を困惑させかねない
・家族の同意を事前に得ておかなければ、スムーズに進められない
・本人の意向を反映しやすい分、費用が天井知らずの高額になりやすい |
生前葬には大きなメリットがありますが、招待される人や家族の気持ちに十分配慮しなければ、理解を得られないまま終わってしまうおそれがあります。
招待された人を困惑させたり、縁起が悪いなどと誤解させたりしないよう、事前に可能な限り時間をとって説明しておくなどの準備が必要です。
生前葬を開くときにかかる費用
生前葬に明確な相場はありません。生前葬には定まった形式もなく、内容は本人の自由です。
どのような内容で生前葬を行うかによって費用は大きく変化します。ここからは、生前葬の費用を決める各要素について解説します。
参列者のためのお食事代・返礼品の費用
生前葬では、従来の葬儀と同様、参列者のための食事代・返礼品代が発生します。もちろん、この費用は、会場の利用料とは別ものです。食事や返礼品にかかる費用は、参列者の人数によって大きく変動します。
ひとまず一人あたりにかかる費用を見積もりましょう。
交通費、ホテル費
遠方に在住の人を複数人招待するとなると、もちろん交通費や宿泊費は、それに比例して膨れ上がります。
会場の利用料
場所に関しては必ずしも葬儀場を使う必要はありません。レストランやホテルなどを利用するケースもあります。どの会場の、どの広さを選ぶかによっても会場の利用料は変わります。
演出料、その他
特別な演出をする場合、追加で演出料がかかります。たとえば、70名を招いて生前葬を行うなら、飲食物や返礼品代を1万円とするならば、最低70万円がかかる計算になります。
料金に会場利用料や演出料、交通費、ホテル費などが加算されることを前提として、まずは葬儀会社に見積りを出してもらいましょう。提示された見積もりを元に、参列者から会費を頂くか否か検討して下さい。
生前葬の流れとやり方
生前葬の多くは、本人が信仰している宗教に関係なく、自由に執り行われます。宗教的儀式を含む葬儀の流れに関する慣例上のルールなどは基本的にはありません。
一般的な生前葬は、以下の流れで行われます。どのような流れで行うべきか迷った際は参考にしてください。
- 司会者による生前葬開式の挨拶
- 本人の「自分史」の紹介(自分の歩んだ道を映画のようにまとめて上映する方法もある)
- 親族や親しい人によるスピーチ(一般的な葬儀でいうところの「弔辞」にあたる)
- 余興
- 会食と談話
- 本人によるスピーチ
- 生前葬閉式の挨拶
- 本人による参列者の見送り、返礼品
本人の意向を反映できるのが生前葬のメリットなので、本人の趣味である音楽の生演奏や、作品展示などが取り入れられる式も多いです。基本的には形式にとらわれず、希望を目いっぱいまで叶えることができます。
生前葬の挨拶
一般的な生前葬では、主催者本人がスピーチを行います。このスピーチは生前葬の意義に関わる重要な要素で、お世話になった人への感謝や、歩んできた人生への思いを伝えることが主な目的です。
人生の節目を悔いのない形で迎えるため、時間をかけて、スピーチの内容を練りましょう。
生前葬のスピーチに必ず盛り込まなければならない内容などはありませんが、最低限、生前葬の開催に至る経緯の説明は盛り込むべきでしょう。
生前葬の主催側は、スピーチを聞いた人が穏やかな心地になるよう、一つ一つ言葉を大切に選んで下さい。また生前葬は、しめやかな雰囲気ではなく明るい雰囲気で行うケースが一般的なため、形式ばった挨拶を避けるのが無難です。
生前葬に招待された場合の香典はどうする?
ここでは、生前葬に参加する場合の香典について解説します。
生前葬の香典はいくら包むもの?
生前葬で香典を包む必要性は、生前葬に会費が設定されているか否かによって異なります。会費があるなら、会費が香典がわりです。会費が設定されていない場合は、相応の金額(1~2万円)を熨斗袋に入れて包むのが一般的です。
この際、熨斗袋には「御香典」や「御花料」と記入します。
香典の金額を決める際に留意しておきたいのは、死後の葬式の有無です。生前葬が実際の葬儀と同様に扱われる場合、つまり死後に葬儀がない場合は、実際の葬儀で包むであろう金額をお香典として包んでいくのが良いでしょう。
案内状に「香典は辞退します」と記載されていたら?
主催者から届いた案内状に「香典は辞退」の旨が記載されているケースでは、迷惑にならないためにも香典を持参してはいけません。香典以外の方法で気持ちを伝えたいなら、後日に贈り物をメッセージ付きで送ることをおすすめします。
贈り物に添えるメッセージの内容には、生前葬への招待に対するお礼を述べ、幸せに満ちた未来を祈る旨の言葉を添えましょう。贈り物も、あえて弔事向けの品物(食品や消耗品など、形にのこらないもの)を選ぶ必要はありません。
ただし、生前葬を催した本人は、身の回り品の整理を済ませていたり、これから断捨離や整理を進めようと考えていたりする可能性があります。その可能性を考慮して、贈り物のサイズやジャンルには十分配慮して選びましょう。
生前葬に招待された場合の服装のマナー
葬儀では通常、喪服や礼服を着用しますが、生前葬では主催者が健在なぶん平服でも問題なしとされる場合があります。
喪服か平服かについては、主催者から届く生前葬の案内状で明示してあるのが通常ですが、案内状を見ても分からない場合は電話やメールなどで問い合わせて確認しておきましょう。
平服で参列する場合でも、気を付けたいのはTPOです。主催者から特別な指定がある場合はまだしも、あまりにも派手な服装や、カジュアルすぎて手抜きに見られるような服装ではひんしゅくを買ってしまいかねません。
喪服ほど形式ばっていなくても、誰に会っても恥ずかしくない、適度に品のある服装を心がけたいところです。
生前葬を行った後の葬儀は?
ここでは、生前葬を行った場合の、死後の葬儀の取り扱いについて解説します。
菩提寺がある場合の戒名や通夜・葬儀告別式は?
生前葬を実施済だったとしても、最低でも火葬が必要になります。火葬だけで済ませるかどうかは遺族の考え方や心情にもよるところで、実際には親類だけでささやかな葬儀(家族葬)を行うケースが多いです。
また、生前葬は一般に普及している儀式とは言い難いため、死後の葬儀を行わないことで、世間から『非常識』のレッテルを貼られる可能性があります。こうした事態を避けるために、通常どおりの葬儀を行う家族もいます。
なお、生前葬に宗教色がなくとも、大抵の場合、本人の死後は通常通り宗教の作法に則って葬儀が行われます。
代々の菩提寺が定められている場合だと、亡くなったタイミングで菩提寺に連絡し、戒名授与、通夜、告別式を行うのが通例です。
菩提寺にあるお墓に納骨するためには、基本的にこれらの手続きを踏まねばならず、火葬だけでは納骨を許されない可能性があります。思わぬトラブルへ発展させないためにも菩提寺に確認しましょう。
生前葬とは別に、自身が亡くなった後のために生前位牌を作る人もいます。
生前位牌では、授かった「戒名(法号)」の2文字だけは朱色で記載し、没後に朱色の部分を他の文字と同じく金文字で記しなおします。生前位牌の作成は仏教的に「逆修」と呼ばれ、死後に位牌を作るよりも徳の高い行為です。
生前葬の主催者が亡くなった場合に行われる葬儀のお香典は?
生前葬に参列した人がさらに死後の葬儀にも参列する場合、たとえ生前葬でお香典や会費を包んでいたとしても、改めてお香典を包む必要があります。
お香典の金額は通常の葬儀と同じで家族や親族なら親らによって1~10万円、友人や知人なら5,000円が相場です。ただし、関係性が濃い場合は相場以上の金額を包むこともあります。
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生前葬は故人ではなく生人が行うため、大切な人への思いや、感謝のメッセージを、主催者本人の口から人々に声を届けることができます。また、主催者自身が趣味嗜好を生前葬に反映することも可能です。
しかし、生前葬は、未だ世間には浸透しておらず、招待を受けた人が困惑したり、不謹慎に感じたりするケースが多々みられるようです。
したがって、招待を受けた人が生前葬の意味を理解し気持ちよく参列してもらえるよう、主催者側には説明が求められます。
ただし、生前葬に限らず、終活は総じて本人が人生の最後を安心して迎えるためのものです。世間でまだ馴染みのない方法であっても、本人の満足や納得につながるのであれば、それは良い「エンディング」に欠かせない儀式なのだといえます。
このことは、もちろん、生前葬でない通常の葬儀でも同様です。
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