認知症になる前に後見人を立てたいと思ったものの、「なんだか手続きが大変そう…」と躊躇していませんか?
成年後見制度の1つである「任意後見制度」は、本人の判断能力が衰える前に後見人を決めることができる制度です。任意後見制度によって、被後見人は老後を安心して過ごせます。
任意後見制度の手続きは、流れや必要な書類などを押さえれば自分でも手続きが可能です。
この記事では、任意後見制度で後見人を立てる際に必要な手続きの流れなどを解説します。
費用が抑えらえるメリットも!成年後見人制度の手続きは自分でもできる
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つがあります。前者は自分が元気なうちに自分の意思で後見人を決め、後見契約を結べる制度です。
後者は自分の判断能力が低下した際に裁判所が後見人を選ぶため、自分の意思に関係なく選任されます。
認知症になる前であれば、任意後見制度の手続きが可能です。任意後見制度は司法書士や弁護士といった専門家に手続きを代行してもらう方法もありますが、自分でも行えます。
自分で任意後見制度の手続きをする場合、手間や時間がかかりますが、費用を抑えられるといったメリットがあります。
任意後見制度の手続きの流れをわかりやすく解説!
任意後見制度の手続きを自分で行いたい人向けに、ここから手続きの流れと手順を解説します。
【STEP1】後見人になってほしい人(任意後見受任者)を選ぶ。候補がいない時は?
任意後見制度は、家庭裁判所が成年後見人を選任する法定後見制度とは異なり、本人が後見してほしい相手と「契約」を結ぶことで自由に(任意で)後見人を立てられます。
ただし、単に契約を結んだだけで後見は開始されません。
将来、本人の判断能力が低下した場合に、「任意後見監督人の選任申立」を家庭裁判所に行うことで、はじめて後見開始となります。それまでの期間は任意後見人ではなく、任意後見受任者と呼ばれます。
また、法人でも任意後見人になることができ、後見人の候補がいない場合は、依頼を受けて任意後見人(任意後見受任者)になるサービスを提供している法人に依頼する方法もあります。
「頼れる身寄りがない」「友人・知人には頼みづらい」など、後見人の候補がいない場合は法人に依頼する方法もあります。
なお未成年者、破産者など、任意後見人になれない人もいるので注意が必要です。
【STEP2】任意後見の契約に盛り込む内容を決めておく
任意後見制度では、「任意後見契約書」で後見の内容について自由に取り決めができます。
任意後見人にどのような仕事をさせるのか契約書に盛り込む内容を固めておき、公証役場で任意後見契約書を作成します。案で構いませんので、ここではその内容を決めましょう。
代理権目録(後見させる仕事の内容)
任意後見人ができる仕事の内容は、任意後見契約書に添付する「代理権目録」に記載します。
代理権目録に記載しなければどれほど必要性が高い行為でも代理ができないため、「何を記載すべきか」は契約前にしっかり検討する必要があります。
代理権目録の用紙の様式には「第1号様式(チェック方式)」と「第2号様式(包括記載方式)」の2種類があります。
例えば以下のようなことを代理権目録で取り決めておきます。
- 財産の管理・保存・処分等に関する事項
- 金融機関との取引に関する事項
- 定期的な収入の受領および費用の支払に関する事項
- 生活に必要な送金および物品の購入等に関する事項
- 相続に関する事項(相続の承認・放棄や贈与・遺贈の拒絶等、任意後見人本人が相続人となる手続き等)
- 保険に関する事項
- 証書等の保管および各種の手続きに関する事項
- 介護契約その他の福祉サービス利用契約等に関する事項
- 住居に関する事項
など
どこまで任意後見人に任せるのか、あらかじめ内容をよく考えておきましょう。
ただし代理権目録には、食事の世話、身辺の掃除のような事実行為や死後事務(死後に発生する相続手続き以外の事務処理)、医療行為の同意などは記載できません。
証書などの保管
任意後見人が後見事務を行うには以下の証書などが必要になります。
- 実印・銀行印
- 印鑑登録カード
- 預貯金通帳
- 年金関係書類
- キャッシュカード
- 保険証書
- 有価証券
- 登記済権利証
- 建物賃貸借契約書のような重要な契約書類
任意後見契約書内で証書の引き渡しと保管に関する内容も記載します。
任意後見人への報酬
任意後見人への報酬も当事者同士で決めますが、報酬も契約の一部なので、任意後見契約書に記さなければなりません。
無報酬と設定することもできますが、契約書には無報酬である旨を記載する必要があります。家族と任意後見契約を締結する際は、無報酬のケースが多いでしょう。
また、具体的な報酬の支払い日(毎月末日に支払うなど)も、任意後見契約書に記載しなければなりません。実際の支払いに関しては、任意後見開始後となります。
任意後見監督人選任の申立てをする人も決める
本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所に任意後見監督人の選任手続きを行い、はじめて任意後見人として選んだ人が後見を開始します。
本人の代わりに配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者も申立が可能です。
【STEP3】必要書類をそろえる
任意後見契約は公証役場で公正証書にしなければなりません。STEP2でまとめた任意後見契約書の案、代理権目録以外にも、公証役場に提出する以下の書類を準備する必要があります。
【本人のみ必要なもの】
【本人と任意後見人になる人の両方が各自必要なもの】
- 印鑑登録証明書(3カ月以内)
- 住民票(3カ月以内)
- 本人確認書類(運転免許証の写しなど)
- 実印
【STEP4】任意後見契約書をつくる
必要書類をそろえた後、任意後見契約書(公正証書)を公証役場で作成します。契約書案は提出後の変更ができないため、事前にしっかりと案をまとめておきましょう。
具体的なステップとして、まずは 最寄りの公証役場に連絡して予約します。
次に、本人または受任者、または委任状を持った代理人が公証役場を訪問して、契約書作成の打ち合わせを行います。
万が一、病気などで自宅や病院から出られない場合は、公証人に出張してきてもらえますが、出張費用がかかります。また任意後見契約作成時に本人の診断書の提出を求められることもあります。
打ち合わせ後、任意後見契約書の原案が作成され、郵送などで公証役場から送付されるので、内容を確認した後、公正証書を作成する日程を決めます。
その後、再び本人と受任者が公証役場に出向き、契約書の内容を最終確認して署名捺印を行います。そこに公証人も署名捺印を行うことで、公正証書が完成します。
なお、契約書作成の費用の目安として、基本手数料1万1,000円、登記嘱託手数料1,400円、収入印紙代2,600円、その他切手代などがかかります。
【STEP5】判断能力が低下したら、任意後見監督人の選任を申立る
任意後見契約を結んだだけでは、効力は発生しません。家庭裁判所が任意後見監督人を選任してはじめて効力が生じます。本人の判断能力が低下したら、選任の申し立てを行いましょう。
任意後見監督人とは、任意後見人に定期的に財産目録(被後見人の財産の内容)を提出させるなどして、契約内容どおりに仕事をしているかどうかを監督する立場の人です。
任意後見人が、不正な行為を行わないように監督するという役割があります。
任意後見受任者などに、任意後見監督人の選任の申立を家庭裁判所に行ってもらいます。
任意後見監督人の報酬の目安は、本人の財産額によって異なり、管理財産額が5,000万円以下の場合には月額1~2万円、管理財産額が5,000万円を超える場合には月額2万5,000~3万円です。
任意後見監督人の選任を申立に必要な書類
任意後見監督人選任の申立の際に必要な書類は、以下の通りです。
- 申立書
- 標準的な申立添付書類
- 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 任意後見契約公正証書の写し
- 本人の成年後見などに関する登記事項証明書
- 本人の診断書
- 本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書や預貯金および有価証券の残高がわかる書類)
なお、申立手数料として収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、登記手数料 収入印紙1,400円分が必要になります。
家庭裁判所調査官による調査
任意後見監督人選任の申立を行った後、面談によって「申立人調査」「任意後見受任者調査」「本人調査」という3種類の調査が行われます。
「申立人調査」と「任意後見受任者調査」では、申立人と任意後見受任者が家庭裁判所へ出向き、申立に至ったいきさつや本人の状況、任意後見受任者の適格性に関する事情を説明します。
「本人調査」では、本人の意思や心身の状況が確認されますが、家庭裁判所に行くことが難しい場合は、家庭裁判所調査官が自宅や施設を訪問することになります。
審判(任意後見監督人の選任)
家庭裁判所は調査結果と提出書類などから総合的に判断し、任意後見監督人を選任した旨(もしくは申立を却下する旨)の審判書を郵送します。
また、任意後見監督人を選任したことが法務局に登記されます。
監督事務報告書・財産目録・収支予定表の作成
選任された任意後見監督人は、家庭裁判所によって決められた期限(おおむね審判の日から1カ月程度)までに監督事務報告書・財産目録・収支予定表を提出します。
【STEP6】任意後見人が仕事を開始する(後見が開始される)
任意後見人は、事前に取り決めた代理権目録の範囲内で後見事務を開始します。このタイミングで「任意後見受任者」から「任意後見人」に変わり、代理権の行使ができるようになります。
自分で任意後見制度の手続きをする際の注意点
任意後見制度の手続きは自分で行うこともできますが、思いのほか契約締結に時間がかかるかもしれません。
また任意後見制度は、認知症になると利用しにくくなる点にも注意が必要です。
内容を正しく判断する能力があれば契約を結べますが、判断能力の有無に関しては、公証人が本人に質問をするなどして判断します。
可能な限り負担なく手続きを完了させたい場合は、専門家のサポートも検討するとよいでしょう。
まとめ 法人に任意後見をお任せしたいなら、一般社団法人全国シルバーライフ保証協会に相談してみよう
任意後見制度は認知症になる前に信頼できる後見人を自分で選任できるため、利用を検討している高齢者も多いのではないでしょうか。
とはいえ、自分で手続きを行うと気力、体力を消耗するので、専門家への依頼も検討することが大切です。
一般社団法人全国シルバーライフ保証協会では、任意後見のサポートをはじめ、高齢者生活のさまざまな支援サービスを提供しています。
任意後見制度の手続きに不安がある人や、法人に後見人を委託したい人は、まず一般社団法人全国シルバーライフ保証協会に相談してください。
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