独り暮らしで誰にも看取られることなく自宅で死亡する、「孤独死」の増加が社会問題になっています。孤独死を避けたいと願っている方はたくさんいらっしゃると思います。
本記事では、孤独死が増えた背景や原因を理解して、適切な対策について考えていきたいと思います。孤独死の現状を統計から紐解きつつ、孤独死の死因・原因・対策方法などを解説します。
本記事で紹介する対策方法を実行することで孤独死のリスクが少しでも抑えられることを願っています。
孤独死の現状とは?高齢者の独り暮らしや孤独死の数を統計で紹介
孤独死の現状を理解するための前提知識として、独り暮らしの高齢者の数と孤独死の数の推移を紹介します。
高齢者の独り暮らしは増加し続けている
内閣府の「令和3年版高齢者社会白書」によると、2015年時点では約590万人だった65歳以上の独り暮らしの高齢者の数が、2020年には推計約700万人、2030年には約800万人に、2040年には約900万人に達すると予測されています。
このように、日本における独り暮らしの高齢者の増加は今後も続くと考えられます。
出典:【内閣府「令和3年版高齢者社会白書」図1-1-9より。総務省の「国勢調査」と国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」をもとに内閣府が作成】
高齢者の孤独死は増えている
東京都監察医務院が公表しているデータによると孤独死を自宅で亡くなった単身世帯者と定義、東京都23区で2020年に自宅で亡くなった高齢単身男性の人数は2,702人で、高齢単身女性は1,505人と報告しています。
2015年に孤独死をした人数が高齢男性1,973人、高齢女性1,143人なので、明らかに増加しています。
前述のとおり、高齢者の独り暮らしは今後も増えていく予測ですから、孤独死もまた増加していくと考えられます。
また、男女比でみると、高齢単身男性の孤独死者数のほうが高齢単身女性の孤独死者数よりも多い点も特徴的です。
一般社団法人 日本少額短期保険協会が結成する、孤独死対策委員会が2022年11月に発表したレポートの中では、孤独死の男女比において、男性は83.2%、女性は16.8%でした。
自宅で亡くなる単身男性が多い理由には様々な理由があると思われますが、男性は女性よりもコミュニケーションと家事が不得手である人が多いためと考えられます。
なお、孤独死が増える原因については、次章で詳しく解説します。
出典:東京都監察医務院|年齢階級(5歳階級)性・世帯分類別異状死数(自宅死亡)東京都特別区 平成27年
出典:東京都監察医務院|年齢階級(5歳階級)性・世帯分類別異状死数(自宅死亡)東京都特別区 令和2年
出典:一般社団法人 日本少額短期保険協会|第7回孤独死現状レポート 2022年11月 日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会(2015年4月〜2022年3月までの孤独死のデータ)
孤独死の死因は半数以上が病気による病死
一般社団法人 日本少額短期保険協会の孤独死対策委員会による2022年版レポートによると、孤独死の死因で最も多いのが66.8%を占める病死で、次に多いのが自殺の9.8%になっています。
孤独死をする高齢者の過半数が、なんらかの病気で亡くなっているのです。
なお、2022年の日本人の死因順位では「悪性新生物(ガン)」が最多でしたが、孤独死に関しては「心筋梗塞」などの突発的な心疾患が原因であることが多いといわれています。
出典:一般社団法人 日本少額短期保険協会|第7回孤独死現状レポート 2022年11月 日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会(2015年4月〜2022年3月までの孤独死のデータ)
出典:厚生労働省|令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況
孤独死が増加する理由は?具体的な3つの原因
高齢者の孤独死が増加する主な原因は次の三つです。
- 日本の未婚率の上昇
- 人間関係の希薄化
- 経済的な困窮
それぞれの原因を詳しく解説します。
1.日本の未婚率が上昇している
高齢者の未婚率の上昇は、孤独死が増加する原因の一つとされています。
令和2年の国勢調査によると、65歳以上の高齢者の未婚率は、2010年には男性11.8%、女性12.2%でしたが、2020年には男性33.5%、女性は23.9%と増えています。特に男性の未婚率の上昇が顕著です。
未婚率が上昇すれば、必然的に単身高齢者の数も増加します。高齢者に限らず全年代で見ても未婚率は上昇傾向にあるため、孤独死に長期的な影響を与える可能性がある問題といえます。
出典:総務省|平成22年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要
出典:総務省|令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要
2.人間関係が希薄化している
近隣住民との付き合いの少なさも、孤独死が増加する原因の一つです。以下は内閣府による「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」をもとに、高齢者と近隣住民との繋がりの変化をまとめた表です。
調査項目 |
2010年度(第7回)
調査結果
(YESと答えた人の割合) |
2020年度(第9回)
調査結果
(YESと答えた人の割合) |
お茶や食事を一緒にする |
29.3% |
14.2% |
家事やちょっとした用事をしたり、してもらったりする |
10.1% |
5.5% |
病気のときに助け合う |
9.3% |
5.0% |
第7回と第9回の調査結果を比較すると、高齢者と地域住民あるいは高齢者同士の日常的な交流が、軒並み減少していることが分かります。
地域住民との交流が希薄化すると、地域のコミュニティから孤立していき孤独死する可能性が高くなります。
人間関係の希薄化はひきこもり状態に繋がるほか、孤独感とストレスをもたらし、心身の健康を損なう原因にもなるとの指摘もあります。
出典:内閣府|平成22年度 第7回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果(全文)(7)社会とのかかわり、生きがい
出典:内閣府|令和2年度 第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果(概要版)(7)友人・知人との交流・社会活動、情報収集
3.経済的に困窮している
孤独死が増加する原因の一つに、経済的な困窮が挙げられます。2018年発行の論文「高齢単身者の貧困率の計測とその社会経済的要因の分析」では、高齢単身世帯の貧困率は23.1%であると発表されました。
言い換えると、単身世帯の高齢者の約4人に1人が経済的に困窮しているということになります。
老人ホームへの入居や定期的な通院、健康的な食生活は、ある程度の経済力があってこそ実現できるものです。
コロナ禍で「メディカル・プア(経済的な理由で受診を控えること)」が話題となりましたが、経済的に困窮すると健康にお金をかけ難くなるため、病気にかかるリスクが高くなります。
孤独死の死因として病死が過半数を占める現状と、経済的な困窮と病気との関係を踏まえて考えると、経済的な困窮が増えることで孤独死も増加するといえるでしょう。
出典:東洋大学|高齢単身者の貧困率の計測とその社会経済的要因の分析
孤独死のリスクが高い人の特徴を考えてみる
ここでは、前述した孤独死が増加する原因から推察できる、孤独死のリスクが高い人の特徴をリストアップしています。
- 未婚の高齢者で独り暮らしの方
- 親族との付き合いがない方
- 近隣住民や友人、知人との交流が無い方
- 自炊などの家事が苦手な方
- 経済的に苦しいが周囲に助けを求められない方
孤独死の可能性を低くするためには、孤独死の原因を踏まえて、できる限りの対策を講じておく必要があります。詳しい対策方法については後述しているので、参考にしてください。
孤独死による周囲への影響
ここからは、孤独死が周囲に与える影響について、家主や周辺住民への影響と親族への影響とに区別し、順番に解説します。
賃貸管理者や周辺住民への影響
孤独死は、賃貸住宅の家主や周辺住民に悪影響を及ぼします。
賃貸住宅の借主が孤独死をした場合、貸主である管理者に金銭的負担が生じる可能性があります。
基本的に、孤独死が発生した部屋の原状回復には、一般的な退去時の清掃(クリーニング)とは異なる「特殊清掃」が必要です。
特殊清掃の費用相場は数万~数十万円とされており、部屋の広さや必要となる清掃作業の内容次第では100万円以上かかることもあります。
また、特殊清掃の費用に加え、残置物の処理などにも多額の費用がかかるケースは少なくありません。
原則として、賃貸で孤独死が発生した場合、孤独死をした方の相続人が原状回復や残置物の処理にかかる費用を負担しますが、相続人がいない場合や音信不通の場合は賃貸管理者が費用を負担せざるを得ません。
さらに、孤独死をした物件が事故物件扱いになると、新たな借り手が現れにくくなるため、賃貸管理者は賃料を下げるなどの対策をとる必要が生じます。
また、孤独死が近隣住民に与える悪影響も無視できません。遺体発見が遅れてしまうと、異臭や害虫被害などの影響があるほか、人によっては精神的なストレスになりかねないからです。
親族や身内への影響
孤独死を知らされた親族は精神的なショックを受けます。孤独死させてしまったことや、遺体を早期に発見できなかったこと、周囲に迷惑をかけたことなどで罪悪感や後悔を抱く遺族は少なくありません。
また、マンションやアパートの残置物の処理や原状回復にかかる費用も原則としては遺族が支払うことになるため、金銭的な負担も相当なものです。
孤独死を予防するための対策方法
孤独死の実情や、周囲に与える影響の大きさを知るにつれ、単身生活に対する不安もますます大きくなることでしょう。少しでも不安を減らすためには、早めの孤独死対策が肝心です。
ここでは、孤独死の可能性を低くできる六つの予防策を紹介します。
親族がいるなら親族に気にかけてもらう
孤独死を防ぐためには、まずはできる限り親族を頼りましょう。
たとえば、毎週火曜日と土曜日には連絡をもらえるようにする、など、定期的な安否確認をお願いするだけで孤独死のリスクを大幅に減らすことができます。
また、体調を崩しやすい季節の変わり目や、病気が見つかったときなどには、その都度お願いして連絡の頻度を上げてもらうことも重要です。
安否確認の手段は電話に限りません。メール、LINE、SNSなどの選択肢のうちから、使いやすくて手軽なものを選ぶのが良いでしょう。
また、親族の住居が近距離の場合は、定期的に立ち寄ってもらうことで、孤独死の備えをより万全なものにすることができます。
ボランティアやコミュニティに参加する
孤独死を防ぐために、地域社会とのつながりを維持しましょう。
地域社会とのつながりを維持するための方法としては、地域のボランティア活動や趣味のサークルといったコミュニティへの参加をおすすめします。
コミュニティに属して定期的に活動することで、同じコミュニティの仲間から体調や安否を気にかけてもらいやすくなるので、孤独死の防止に役立ちます。
また、社会的なつながりの維持は認知症の予防にも効果的とされていますし、ボランティア活動であれば地域社会への貢献による達成感ややりがいを得られます。
このように、地域社会とのつながりには孤独死対策以外にも様々なメリットがあるので、まずは自分に合うコミュニティや活動を探すところから始めましょう。
地域の取り組みやサービスを積極的に利用する
孤独死は地域社会において関心度の高い問題です。全国には行政政策の一環で孤独死を防止するための取り組みやサービスを提供している自治体もあるので、積極的に活用しましょう。
自治体が行う取り組みの一例として、ここでは群馬県桐生市の高齢者見守り活動を紹介します。群馬県桐生市は地域の民間事業者と提携して独り暮らしの高齢者のための様々な取り組みを行っています。
たとえば「民間事業者と連携した高齢者見守り活動」では、宅配事業や福祉事業を行う生活協同組合コープぐんまと協定し、何らかの異変があった際に自治体に連絡を行う仕組みを作っています。
群馬県ではこうした報告に基づき、必要に応じて民生委員、児童委員、警察と連携して状況を確認し、支援を実施します。
また、「ひとり暮らし高齢者無料入浴サービス」は、独り暮らしの高齢者の保健衛生や健康保持、生きがいの増進を図る目的で、月に3回使用できる無料入浴券を配布する取り組みです。
このような地域の取り組みやサービスを利用することで、孤独死のリスクを抑えることができます。自分が居住している自治体の取り組みやサービスを調べてみてはいかがでしょうか。
民間の見守りサービスを利用する
民間事業者による高齢者見守りサービスも、孤独死対策として効果的です。たとえば、以下のような民間の見守りサービスがあります。
- 郵便局員が訪問する見守りサービス
- 食材などを定期配達する生協の見守りサービス
- 常備薬の定期補充の際に安否確認を行うサービス
- 定期的に家の様子を見てもらえるサービス
郵便局員が訪問する見守りサービスは、郵便局員が利用者宅を訪問して、健康状態の確認や生活の困りごと相談を行うといった内容のサービスです。
そのほか、生協による食材・日用品の定期配達サービスなどは、生活を快適にすると同時に孤独死対策も実現できるので、必要に応じて利用してみてはいかがでしょうか。
また、要介護・要支援の認定を受けている方であれば訪問介護サービスを利用するのも一手です。
デジタル機器を活用する
下記のようなデジタル機器を活用することで、比較的少ない費用負担で孤独死対策ができます。
- 転倒などを検知し通報できる設置型センサー
- 温度や人感を検知できる設置型センサー
- テレビに接続することで室内の状況を検知できるセンサー
- スマートフォンの位置情報を共有して遠隔から見守る機器
デジタル機器は単身高齢者の心強い味方です。
ただし、使い方を誤ると監視されているような息苦しさや精神的ストレスを生じさせかねないため、各人の性格や生活スタイルに照らし合わせて適切な使用法を見極めましょう。
老人ホームに入居する
孤独死を防ぐための効果的な方法の一つが老人ホームへの入居です。
老人ホームでは施設スタッフが高齢者を見守り、健康状態を定期的にチェックします。また、レクリエーションが実施されている施設もあるため、入居者は孤独感なく過ごすことができるでしょう。
老人ホームにはさまざまな種類があります。
介護が必要な場合は「特別養護老人ホーム」や「介護医療院」などの施設を選びましょう。介護が不要な場合は「サービス付き高齢者向け住宅」や「健康有料老人ホーム」などが選択肢に入ります。
なお、老人ホームの入居には身元保証人が必要です。頼める人がいない場合は、民間事業者が提供する「身元保証サービス」の利用を検討すると良いでしょう。
事業者と身元保証契約を結ぶことで、身元保証人を代行してもらうことが可能です。
もし孤独死したら…「死後事務委任契約」で孤独死後への対策
身寄りがなくて自分の死後が不安な方や親族に負担をかけたくない方には、「死後事務委任契約」をおすすめします。
死後事務委任契約は、死後に発生する遺体の引き取りや葬儀、家賃の清算、行政の手続きなどの手続きを信頼できる第三者や専門家に委任できます。
死後事務委任契約を結んでおくことで周囲に発生する負担を減らすことができます。
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孤独死の増加は社会問題化しており、孤独死が親族や周囲の住民、家主などに与える周囲への影響も大きいです。
影響を少しでも和らげるためには、孤独死の原因を知り、できる限りの孤独死対策を行っておくことが重要です。
自治体の取り組みや民間のサービス、デジタル機器などを上手に活用して、孤独死を予防しましょう。
孤独死対策を行ってもなお不安が大きい方には、全国シルバーライフ保証協会が提供する、「カナエル(死後事務委任契約)」や「オーカスタイル(身元保証サービス)」の利用をぜひご検討ください。
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