身寄りのない人の死亡数は増加傾向にあり、さまざまな問題が発生しています。身寄りのないままに死亡した場合、財産や葬儀はどうなるのか、など不安は尽きないものです。
この記事では、身寄りのない人が死亡した場合の葬儀や財産に関する疑問について解説します。また、身寄りのない人が生前にとれる対策や、老後を安心して過ごすための手続きも紹介しています。
身寄りがない人の死亡は10万件超(平成30年~令和3年)
はじめに、身寄りのない人の死亡者数を紹介します。
2023年3月に総務省行政評価局が発表した「遺留金等に関する実態調査 結果報告書」によると、2018年4月1日から2021年10月31日までの身寄りのない人の死亡者数は10万5,773件です。
なお、この調査においては、遺体の引取者のない死亡人が「身寄りのない人」として定義されています。
また、2021年10月に総務省が実施した調査では、全国の自治体が保管する「無縁遺骨」と呼ばれる引き取り手のない遺骨の数が、合計で約6万柱にも上ったことが判明しました。
無縁遺骨の増加は自治体や住民の負担になり、近年では大きな社会問題となっています。
出典:総務省行政評価局|遺留金等に関する実態調査 結果報告書
出典:朝日新聞DIGITAL|無縁遺骨、全国に6万柱 市区町村が管理 総務省初調査
身寄りのない人が死亡したときの一般的な手続きの流れ
ここでは、身寄りのない人が死亡した場合の一般的な手続きの流れを、死亡した場所(自宅・病院・旅行先)ごとに順番に解説します。
自宅で死亡したときの流れ
身寄りがない人が自宅で亡くなると遺体が放置され腐敗が進み、その後異臭に気づいた住民による通報によって発見されるケースが多いです。
また、郵便受けに新聞やチラシが溜まっており、それを不審に思った近隣住民が行政機関に連絡。警察への通報などをきっかけに、遺体が発見される例もあります。
身寄りのない人が自宅で死亡した場合の、遺体発見以降の一般的な手続きの流れは以下のとおりです。
- 遺体を発見した人が警察に通報する
- 検視後、警察が自治体に連絡する
- 自治体が遺体を引き取る手配をする
- 遺体を保管して一定期間相続人や親族を探す
- 見つからない場合、自治体が火葬、埋葬を行う
自治体が火葬や埋葬をする理由は、「墓地、埋葬等に関する法律」の第9条に、死亡地の市町村長が火葬及び埋葬を行うものと定められているからです。
出典:厚生労働省|墓地、埋葬等に関する法律
病院で死亡したときの流れ
身寄りのない人が病院で死亡した場合の手続きは、自宅で死亡した場合の手続きとほとんど変わりません。
自宅で死亡した場合は警察が自治体へ連絡しますが、病院で死亡した場合は病院が自治体へ連絡して遺体の引き取りを求めます。
遺体を引き取った自治体が一定期間遺体を保管して、相続人や親族を探し、見つからなかった場合は火葬及び埋葬を行う点も同様です。
ただし、病院で亡くなった身寄りのない人の場合は、「墓地、埋葬等に関する法律」ではなく、旅行中、もしくは住所、居所または氏名が分からないときに適用される「行旅(こうりょ)病人及行旅死亡人取扱法」に則り自治体が火葬・埋葬を行うという違いがあります。
出典:厚生労働省|行旅病人及行旅死亡人取扱法
外出先で死亡したときの流れ
身寄りのない人が外出先で死亡した場合の流れについて解説します。
身寄りのない人の遺体は、発見後すみやかに警察に搬送され、警察は遺体の所持品などから身元を調べます。
調査によって親族や引取者がいないことが判明した後の流れは、身寄りのない人が病院で死亡した後の流れと基本的には同じです。
「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に基づき、身寄りのない人が死亡した土地の自治体が遺体を引き取り、火葬と埋葬を行います。
出典:厚生労働省|行旅病人及行旅死亡人取扱法
身寄りのない人が死亡した際によくある疑問
身寄りのない人が死亡した場合の葬儀の流れや、電気・水道といったライフラインの契約、持ち物の処分方法などについて、不安に思う人は少なくありません。
ここからは、身寄りのない人の死亡に関するさまざまな疑問について解説します。
葬儀・火葬・埋葬(納骨)はどうなる?
身寄りのない人が死亡した場合の葬儀・火葬・埋葬(納骨)の手続きや流れについて具体的に解説します。
身寄りのない人が死亡した場合、前述のとおり、自治体が遺体を引き取って火葬と埋葬(納骨)を行いますが、葬儀は行いません。ただし、身寄りのない人の遠方の親族や近隣住民、入居施設などが葬儀を行うケースはあります。
火葬後の遺骨については自治体ごとに決められた期間(約5年ほど)遺骨を保管した後に合同で埋葬(合祀)されます。
なお、故人の財産を葬儀費用にあてることができますが、故人に財産がない場合は葬儀を行う人が費用を負担しなければなりません。葬儀を行う人が葬儀費用を負担する場合は次のような制度を利用できるので、参考にしてください。
葬祭費補助金 |
・葬儀を行う人に対して給付される補助金
・国民健康保険や社会保険、後期高齢者医療保険の加入者などが亡くなった場合に請求できる
・請求先は故人が住民登録をしていた自治体の保健年金課
・補助金の金額は、自治体によって異なるが1〜7万円とされている |
埋葬給付金 |
・埋葬を行う人に対して給付される補助金のこと
・故人が共済組合に加入していた場合や、勤務していた法人が健康保険組合の加入員だった場合に請求できる
・請求先は共済組合または健康保険組合
・補助金の金額は5万円 |
葬祭扶助制度 |
・葬儀を行う人に対して葬儀費用が支給される制度
・生活保護を受けていた故人の遺族も生活保護を受けているなど、葬儀を行う人に金銭的な余裕がないと認められる場合などに支給される
・民生委員など、故人の遺族以外も申請できるが、制度の利用条件をクリアしていなければならない
・申請先は申請人が故人の遺族かそれ以外の関係者かによって異なる。
・支給される葬儀費用は自治体によって異なるものの、大人なら20万9,000円以内、12歳未満の子どもなら16万7,200円以内が目安とされている |
電気、水道、携帯電話などの契約はどうなる?
身寄りのない人が電気・水道などのライフラインの料金を銀行口座振替で支払っていた場合、銀行が口座を凍結しないかぎりは基本料金の引き落としが続きます。
銀行は、口座名義人の死亡を確認するとすぐに口座を凍結するので注意が必要です。
口座振替が続き、預金が底をついて各種契約料の支払いがされなくなると、ライフラインの提供業者は、契約時の保証人に未払い料金を請求する、督促状を送る、といった所定の手続きを行います。
身寄りのない人が亡くなったら、持っていた物はどうなる?
身寄りのない人が預金や不動産などの相続財産を所有していた場合、それらの財産は「法定相続人」に相続されるのが原則です。
民法において、故人(被相続人)の配偶者、子、直系尊属(両親や祖父母)などが法定相続人と定められています。
身寄りのない人は、未婚で子どもがおらず、両親とは死別、親戚とも縁遠いなどといった事情のある人が多いことから、法定相続人がすぐに見つかるケースは稀です。
法定相続人が見つからないことで相続財産の引継ぎが進まず、長期間放置されるケースもめずらしくありません。
借金などの債務はどうなる?
故人に借金や税金の滞納などの債務があった場合、法定相続人は原則としてそれらの債務も相続します。つまり、相続人が借金返済の義務を引き継がなければならないということです。
故人に身寄りがなく相続人がいないようなケースでは、債権者は借金の返済を求めるために裁判所へ「相続財産管理人(相続財産清算人)」の選任を申し立てます。
相続財産管理人とは、相続人のいない故人(被相続人)の財産について管理・精算を行う方のことです。相続財産管理人の職務には専門知識を要するため、通常は弁護士などの法律の専門家が裁判所に選ばれます。
裁判所によって選任された相続財産管理人は、債権申立公告(債権者を探すための公告)、相続人捜索公告(相続人を探すための公告)といった法律上の手続きを行います。
これらの手続きを経て相続人の不存在が確定したのちに、被相続人の財産から債権者への清算手続きが実行されるという運びです。なお、清算後の残余財産は最終的には国庫に帰属します。
身寄りがない人が部屋に残した荷物(遺品)はどうなる?
身寄りのない人の遺留品を、相続人でない第三者が勝手に処分することはできません。このことは、たとえ賃貸住宅の貸主であっても同様です。
賃貸住宅における孤独死では、同物件の居住者が異臭などをきっかけに死亡者を発見するケースが多く見受けられます。
通常、賃貸住宅の貸主は死亡者の保証人や相続人に遺品処分などを依頼しますが、保証人や相続人がいない場合はそうはいきません。
賃貸住宅の貸主が身寄りのない人の遺品を処分するためには、「相続財産管理人」の選任を裁判所へ申し立てる必要があります。
ただし、相続財産管理人であっても遺品を自由に処分することはできず、家庭裁判所に許可を求めながら遺品整理を進めることになるため、相当な時間がかかるのが一般的です。なお、賃貸借契約の解約手続きも相続財産管理人が行います。
身寄りのない人が死亡すると起こる問題
ここでは、身寄りのない人の死亡により発生する問題を、「身寄りのない人自身に関する問題」と「周囲に起こる問題」に分けて紹介します。
身寄りのない人自身に関する問題は以下のとおりです。
- 葬儀や遺品の処理が希望どおりに行われない
- 財産も希望どおりに使われず、最終的には国庫に帰属される
- 孤独死により遺体の発見が遅れ、異臭を発生させてしまう
- ペットの引取先が見つからない など
周囲に起こる問題に関する問題は以下のとおりです。
- 火葬や埋葬などの手続きが自治体の負担になる
- 葬儀費用を友人・知人や遠方の親族が負担する可能性がある
- アパートの遺品整理や原状回復で貸主に迷惑がかかる
身寄りのない人が死亡した場合に、真っ先に負担を被るのは行政です。自治体は埋葬法により引取人のない遺体の火葬・埋葬手続きの費用を負担するものと定められています。
身寄りがなくても近隣住民や施設の管理者、賃貸の管理人が「生活保護の葬祭扶助」を利用して葬儀を行う場合、自治体の負担は4分の1になり、残りの4分の3は国が負担します。
支給額はケースによって異なりますが、20万円前後が多いようです。
2020年における葬祭扶助の申請件数は全国で4万6,677件で、行政の支出は約97億円にも上りました。今後、身寄りのない人の死亡が増えることで、葬祭扶助の支出も増加し、行政の負担も増えることが予測できます。
以上のような問題を対策するには、生前に適切な準備をしておくことが大切です。次の章では、生前にできる対策について解説します。
出典:朝日新聞DIGITAL|「無縁遺骨」の葬祭件数が最多に 「身元わかっている人が9割以上」
身寄りのない人が死亡後のためにできる3つの準備
ここからは、身寄りのない人が死亡後の問題に備えるためにとれる3つの対策について解説します。
1|遺言書を残しておく
身寄りのない人の死亡後の備えとして、遺言書は非常に有効な対策です。遺言書を作成しておけば、「遺贈」によってお世話になった方や関心のある支援団体、慈善団体に寄付するなど、自分の資産を希望どおりに使うことができます。
遺産の有効活用を望むのなら、遺言書を軸にして方針を考えると良いでしょう。
まずは、法定相続人以外のお世話になった人や、関心のある支援団体などをリストアップするところから始めてはいかがでしょうか。
なお、遺言書は書き方に不備があると無効になってしまうため、公証人が作成する「公正証書遺言」による遺言をおすすめします。
2|葬儀会社に相談しておく
希望どおりに葬儀を行って欲しい場合や、スムーズに葬儀を進めたい場合は、事前に葬儀会社に相談し、契約しておく必要があります。
葬儀会社と契約したあとは、入所施設や賃貸物件の貸主、親しい人などに契約した旨を伝えておくことをおすすめします。第三者に契約の存在を伝えておくことで、契約が履行されないリスクを回避することができるからです。
葬儀には、喪主の存在が不可欠です。一般的には、故人の遺言や血縁関係によって喪主が決まります。喪主がいない場合は、遠縁の親族や友人・知人・老人ホームや自治体の担当者などが喪主を務めることになります。
喪主を依頼できそうな方に相談して、承諾を得ておきましょう。喪主が決まったら、葬儀会社に伝えておきます。
なお、冠婚葬祭互助会へ加入して掛け金を積み立てておくことで、葬儀の際に費用へ充当できたり、割引を受けられたりといったメリットがあります。
葬儀費用が不安な人は、資料を取り寄せるなどして、加入について検討してみると良いでしょう。
3|死後事務委任契約を締結する
死後事務委任契約とは、死後に行うべき事務手続きを第三者に委任しておくための契約です。
死後事務委任契約で委任できる事務には、次のようなものがあります。
- 遺体の引き取り
- 葬儀や納骨の手続き
- ライフライン関係の解約
- 行政に対する手続き
- 自宅の清掃や遺品整理
- 親族や友人、知人への連絡
- 家賃や医療費などの精算
- 光熱費や公共料金の支払い
- ペットの引き継ぎ先の指定
- デジタル遺品の処理 など
死後事務委任契約を締結しておくことで、親族や賃貸住宅の貸主といった関係者に迷惑をかけることなくスムーズに死後事務を済ませることができます。
死後に対して不安を抱える身寄りのない人にとって、死後事務委任契約は心強い味方です。
司法書士や行政書士などの専門家に依頼すれば、安心して死後事務を委任できるでしょう。
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身寄りのない人が安心して老後を過ごすには?
死後の不安を解消するための準備はもちろん大切ですが、老後の生活を安心して過ごすための環境づくりも同様に重要です。
死後の備えにばかり意識を向けていては、気分が落ち込みかねません。心地よく暮らしていくために、老後の生活の安心と安定を守るための方法についてもしっかりと考えておきましょう。
任意後見制度を利用する
任意後見制度では、将来的な判断能力の低下に備えて任意後見人を選任しておくことができます。
任意後見人は、判断能力が低下した後の本人の財産(不動産、預貯金、有価証券、年金など)の管理や身上保護を行います。
身上保護の具体例としては、住居の確保や生活環境の整備、施設入居・医療機関入院時の契約手続きのサポート、医療費・介護費の支払いなどがあります。
なお、任意後見制度を利用するには、任意後見人の候補と公正証書で任意後見契約を締結しておかなければなりません。
任意後見契約を締結しておくことで老後生活への不安を軽減できますが、任意後見人は死後事務を行うことはできないため、併用することも検討しましょう。
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財産管理等委任契約を締結する
財産管理等委任契約とは、契約者が病気やケガをしたとき、第三者に財産管理や療養看護を委任する契約です。
契約者の判断能力が低下してからでないと効果が発揮されない任意後見契約とは違って、財産管理等委任契約は契約者の判断能力に関わらず契約を履行できます。
財産管理等委任契約で委任できる手続きの例は次のとおりです。
- 銀行での振込手続き
- 税金の支払い手続き
- 医療機関との契約手続き
- 要介護認定の申請手続き など
老人ホームに入所する
老人ホームに入所することで、老後の日常生活や孤独死への不安を軽減することができます。
老人ホームと一口に言っても、その種類はさまざまです。入所するために要介護の認定が必要な施設や、自立した生活ができる人でも入所できる施設など、幅広い選択肢があるので、自分の希望や生活環境に適した施設を選ぶことができます。
身寄りがない人が老人ホームに入所する際の障害になりやすいのが、身元保証人です。おおかたの老人ホームは、入所時に身元保証人を求められます。
もし身元保証人をお願いできる人が身近にいない場合は、民間企業が提供する身元保証サービスの利用を検討しましょう。
身元保証サービスを利用することで、施設入所時や医療機関への入院時に必要になる身元保証人を代行してもらえます。
民間企業の中には、身元保証サービスだけでなく意思能力の低下に備えた後見サービスや死後事務委任などを提供しているところもあるので、老後と死後の不安をまとめて解消したい方には心強い味方です。
身寄りのない人が抱く死亡後の不安は「一般社団法人全国シルバーライフ保証協会」にご相談ください
身寄りのない人の死亡は増加しており、社会問題となっています。
身寄りがない場合、生前に死後事務手続きや葬儀、遺産及び遺品の処分などの準備をしておかなければ、希望の手続きが行われないだけでなく、関係者に迷惑をかけてしまいかねません。
死後の不安を解消するために、遺言書の作成や死後事務委任契約の利用を検討しましょう。
遺言書の作成や死後事務委任契約、施設入居時の身元保証サービスにご興味のある方は、「一般社団法人全国シルバーライフ保証協会」にご相談ください。
一般社団法人全国シルバーライフ保証協会は、司法書士などの士業法人で構成されるベストファームグループを母体としており、死後事務委任契約「カナエル」や身元保証サービス「オーカスタイル」を提供しています。
死後事務委任契約や身元保証サービス契約時には、一定の金額を預託金としてお預かりしますが、信託会社を介して安全に保管・管理しておりますのでどうぞ安心してお任せください。
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