生前整理とは、生前に残したいものと不要なものを選別したうえで、不要なものを処分する行為を指します。
生前整理を行うことで自身の生活が豊かになり、将来の家族の負担を軽減できますが、具体的な進め方を知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、生前整理を行うメリットや、やり方について詳しく解説します。スムーズに生前整理を進めるポイントも紹介するので、ぜひ本記事の情報を役立ててください。
生前整理とは
自分の体が元気なうちに、財産や身の回りのものを整理することを生前整理といいます。
不要なものや処分に困るものを残したまま寿命を終えた場合、家族・親族間でトラブルが起こる可能性があります。生前に破棄することで、家族の負担を軽減できるでしょう。
また、周りに頼れる方がいない単身者の方も、身体が少しでも元気な内に生前整理を進めておくべきです。
この生前整理を始めるきっかけには「体の不調を感じ始めたため」「介護施設への入所が決まったため」などがあり、若い頃と比べて動ける元気が少なくなってから行動を起こす方もいます。
重い荷物を運ぶなど動ける元気があるうちに生前整理を進めておいた方が、介護施設への入居が必要な際も最小限の持ち物で入居できます。
生前整理によって今までの人生を振り返ることで、将来を前向きに考えるきっかけにもなることでしょう。
混同されやすい言葉との違い
生前整理と混同されやすい言葉に遺品整理と老前整理があります。それぞれの言葉の意味、および生前整理との違いについて解説します。
生前整理と遺品整理との違い
遺品整理とは、故人のものを、残された家族・親族などが処分する行為をいいます。故人が残した遺言やエンディングノートに沿って処分・相続する場合もあれば、家族の判断で処分するケースもあるでしょう。
故人がひとり暮らしで賃貸物件に住んでいた場合、アパートやマンションの賃貸借契約の解約も家族が行わなければなりません。音楽配信や動画配信サービスなどのサブスクリプションサービスや、SNSアカウントの整理も必要になるかもしれません。
生前整理も遺品整理も「ものの処分」という共通点はありますが、生前整理は本人の生存中の行為に対して、本人の死後、家族が行うのが遺品整理という違いがあるので覚えておきましょう。
生前整理と老前整理との違い
老前整理とは、高齢に達する前に不要なものを処分する行為をいいます。基本的に本人が自分のものを処分しますが、本人の代わりに家族が行う場合もあるでしょう。
老前の基準はさまざまですが、一般的に60代未満(40代~50代)が老前にあたると考えられています。
生前整理も老前整理も、本人が生存中の「ものの処分」に共通性がありますが、生前整理が一生涯を表すことに対して、老前整理は「老いる前」という違いがあります。
高齢に達すると認知症などの影響により、正常な判断力を維持できないリスクが高くなりますし、不要なものを処分する体力が落ちている可能性も考えられるでしょう。
老前整理によって早めに処分することで、安心して老後を過ごせるメリットがあります。
生前整理を行うメリットとは
生前整理を行うメリットには、次のようなものがあります。
- 相続争いの防止
- 万が一のケースへの対応
- 自身の生活の快適さ
それぞれ解説していきます。
生前整理のメリット①:相続争いを防止できる
生前整理によって、家族・親族間の相続争いの防止が見込めます。たとえば財産を分配しやすいように不動産を現金化したり、遺言書と財産目録によって「誰に、何を、どのくらい残すのか」を示したりなどの対策が考えられるでしょう。
自分では認識していない財産に価値があり、相続争いの火種になるケースもあります。生前整理の過程で自分の財産を把握していれば、事前に換金したり、財産分与の対象に含めたりすることができます。
生前整理のメリット②:万が一のことが起こっても困らずにすむ
生前整理によって不要なものを処分し、必要なものを必要な場所に残すことで、万が一のことが起こっても慌てずに対処できます。
たとえば急な事故や病気で入院しても、家族はキャッシュカード、通帳、保険証券の場所を知っているのでスムーズに対応できるでしょう。
他にも、友人・知人の連絡先一覧を整理して自宅に残しておけば、自身が亡くなったときに家族から連絡を入れてもらえます。
生前整理のメリット③:自分自身の生活が快適になる
不要なものと必要なものが混在している状態よりも、不要なものを処分し、必要なものを残している状況の方が快適に過ごせます。
普段から「何が、どこにあるのか」が分かっていれば、探し物をする時間が節約できるので、落ち着いた気分で日常生活を送れるのではないでしょうか。
体力が低下する前に生前整理を行うことで、シンプルで充実した老後生活を迎えられるのです。
生前整理のデメリットをチェックしよう
生前整理にはメリットがある一方で、労力を要し、お金がかかる点はデメリットといえるかもしれません。詳しく解説します。
生前整理のデメリット①:労力を要する
生前整理には時間がかかります。必要なものと不要なものを判断し、必要なものをどう残すか、不要なものをいつまでに、どのような方法で処分するかを決めなければなりません。
そのような判断は気持ちに負荷がかかりますし、大型ゴミの処分作業は体力的な負担も重いでしょう。換金可能な財産に関しても、リサイクル業者を探す段階から始めなければなりません。
「必要だから残す」と決めたものに対しても、いつまで残すのか、残すことで相続トラブルが発生しないかどうかを考えなければなりません。
特に仕事をしながら生前整理を行う場合、思うように作業が進まず、激しいストレスを抱える懸念があるので注意しましょう。
生前整理のデメリット②:お金がかかる
不要なものを処分したり、生前整理にあわせて遺言書を作成したりするにはお金がかかります。費用の目安は以下です。
内容 |
費用の目安 |
粗大ゴミや家電の処分費用 |
400円~30,000円 |
不用品回収業者への費用 |
30,000円~1,000,000円 |
弁護士や司法書士に支払う法的な費用 |
30,000円~300,000円 |
粗大ゴミや家電の処分費用は、内容や量によって変わります。基本的に1点400円~2,000円程度で処分できますが、量が多ければ数万円の出費を見込む必要があるでしょう。
不要品回収業者に処分を依頼する場合も、量によって金額が変わります。ものが少ない場合は数万円ですむかもしれませんが、ものが多ければ50万円~100万円の費用がかかるケースもあるでしょう。
また、遺言書作成を弁護士や司法書士に依頼すると費用が発生します。遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がありますが、公的な機関で原本が保管される公正証書遺言の場合、数万円~数十万円の費用を見込む必要があります。
生前整理のやり方・手順を紹介
生前整理の一般的な流れは以下です。
- いるもの、いらないものを整理する
- 財産を整理する(資料をまとめる・情報をまとめる・実物財産を整理する)
- 必要に応じて遺言書を作成する
- エンディングノートを書く
それぞれ解説していきます。
ステップ①:いるもの、いらないものを整理する
自分にとって本当に必要なものを見つめ直し、不要なものを捨てる行為を断捨離といいますが、生前整理のファーストステップとして断捨離を行いましょう。
断捨離を難しく考える必要はありません。今後の人生や、自分が亡くなったあとをイメージしながら、「いるもの」と「いらないもの」を整理するだけです。
ひとつの判断基準として、「使っていないものや使う予定がないものはすぐに処分する」や「使っていなくても捨てたくないものは一旦保留する」などがあります。一旦保留したものは、「数年後に同じ状況なら処分する」などの方針を決めておくと迷わないでしょう。
その後、すぐに処分するものはゴミに出したり、買取業者に売ることを考えてください。
自分では価値がないと思っても、高値で業者に買い取ってもらえるケースがあります。たとえば押入れの奥に眠っている古いレコードなどは、専門業者の査定を受けることで、予想以上の高値が付く可能性があるでしょう。
生前整理の断捨離で大切なのは、次に紹介する財産目録を作成して、仕訳の基準を明確にした状態で進めることです。
不要なものが大量にあって処分に困る場合は、前述した不要品回収業者に依頼するのもひとつの方法ですが、業者によっても料金は異なります。複数の業者から相見積もりを取って、信頼できる業者を選びましょう。
ステップ②:財産を整理する
次に財産の整理を行います。具体的には、資料の整理、財産目録の作成、実物財産の整理の順に進めていきます。
資料をまとめる
まずは財産資料の整理を行います。主な資料には生命保険の証券、不動産の権利証、株式、債券、預貯金通帳などがあります。自宅に金庫がある場合は、金庫内に保管するといいでしょう。
情報をまとめる(財産目録の作成)
財産資料をまとめたのち、一覧表として財産目録を作成します。「どのような財産がどこにあるのか」を整理したうえで家族と共有しましょう。すべての情報を開示したくない場合は、銀行名や保険会社名に留めるといった選択も可能です。
実物財産を整理する
財産目録を作成することで、あらためて不要なものが明確になります。この段階では相続時にトラブルになりそうな財産や、相続税対策まで考えるといいでしょう。
たとえば生命保険や医療保険の見直し、株や債権の現金化、不動産の売却などが考えられます。後述する生前贈与も検討しながら、実物財産の整理を進めてください。
以上のプロセスによって、「いるもの」と判断した財産をさらに熟慮し、場合によっては売却や生前贈与によって整理を進めていきます。
ステップ③:必要に応じて遺言書を作成する
相続人となる家族・親族が多く、財産分割で争いが予想される場合など、必要があれば遺言書を作成します。適切な形式で作成された遺言書には法的な効力があるため、故人の思いに沿って遺産が分配されます。
遺言書によって指定できる内容には「どの相続人にどの財産を残すか」や「各相続人の相続の割合」だけでなく、「相続人の廃除」や「相続人以外への遺贈」「遺言執行者の指定」もあります。
遺言執行者とは、遺言の内容を適切に実行する人です。相続人からも選べますが、相続の知識と経験がなければスムーズに進まないケースもあるため、司法書士のような専門家に依頼してもいいでしょう。
ステップ④:エンディングノートを書く
エンディングノートとは、葬儀・納骨の希望、医療・介護の方針、友人・知人の連絡先、家族へのメッセージなどを自由に記載できるものです。
ノートという名称ですが、市販のエンディングノート(終活専用ノート)以外にパソコンでも作成可能です。スマホアプリに対応しているエンディングノートもあります。
遺言書のような法的効力はありませんが、エンディングノートによって自身が病気になった際や死後の対応など、家族に細かな希望を残せます。
生前整理を進めるときのコツ
生前整理をスムーズに進めるコツに「利用中のサービスの把握」や「明るい気持ちで取り組む」など6つあるので紹介します。
利用中のサービスも把握する
すでに使っていないサブスクリプションサービス(定額サービス)があれば、生前整理の際に解約することで、無駄な出費を抑えられるでしょう。
今後も利用するサブスクリプションサービスについては、家族・親族に伝えておくことで、自身が亡くなったあとの早期解約が可能になります。
そのために大切なのは、利用中のサブスクリプションサービスの一覧化です。
すべての定額サービスをリストアップすることで、「何が必要で何が不要なのか」を判断しやすくなりますし、エンディングノート内にIDやパスワードを残しておけば、家族の負担も軽減するでしょう。
SNSなどのアカウントも忘れない
生前整理では、SNSアカウントへの対処も忘れずに行いましょう。代表的なSNSにTwitter、Instagram、Facebookなどがあります。また、GmailやLINEを利用している人も多いのではないでしょうか。
そのようなSNS・ネットサービスのうち、不要なものは解約し、必要なものを残す。残したSNSはID、パスワードと共にエンディングノートにまとめることで、家族も対処しやすくなります。
自身の逝去をSNSやブログで告知してほしい場合は、その旨も家族に伝えておきましょう。
周囲の人も巻き込む
生前整理の仕分けや不要物の処分には大きな労力がかかります。すべてをひとりで対応するのは大変なので、家族、友人などに協力してもらいながら進めるといいでしょう。
自分以外の人を巻き込むことで、生前整理の段階で思い出の品を譲ることができたり、誰かの後押しがなければ捨てづらいものを一緒に処分するきっかけを得られたりします。
家族・親族と共に生前整理を行えば、介護・老後の希望や、死後に残るものの処分方法のリクエストも伝えられるでしょう。
明るい気持ちで取り組む
生前整理という名前を意識しすぎると、ネガティブな感情になってしまうかもしれません。なぜなら、生前整理を自身の死に向かう行為と感じてしまうことがあるからです。
しかし、生前整理は過去を振り返ったうえで、より良い老後生活を送るために取り組むものです。その目的を忘れないようにしましょう。
それでも過去と向き合う過程で自身の年齢を感じたり、「あのころは良かった……」という後悔が押し寄せたりするかもしれません。すでに亡くなっている家族の思い出の品を見て感情的になる可能性もあります。
そのようなときは一旦作業をストップして、気持ちを切り替えることも大切です。
作業を一気に進めようとしない
生前整理は少しずつ作業を進めることがポイントです。作業をまとめると精神的・肉体的な負担が大きくなります。焦燥感から判断を誤れば必要なものまで処分し、後悔してしまう可能性があるため注意が必要です。
何より生前整理は「必要なものと不要なものの仕分け」「財産整理」「遺言書やエンディングノートの作成」などプロセスが多岐に渡るので、ある程度の期間をかけて計画的に進めることが大切です。
必要に応じて生前整理アドバイザーなどの専門家に相談する
処分するものが多すぎたり、何をどう進めればいいか分からなかったりする場合は、生前整理アドバイザーなどの専門家に相談するのもひとつの方法です。
デジタルデータの整理に対応している業者もいますので、自分・家族だけではうまく進められない場合は検討しましょう。
どの業者に依頼すればいいか分からない場合、まずはネットで口コミ情報を調べるのが王道です。しかし、世代的にネット検索に慣れていない場合は、孫のような若い世代に頼ることも検討してください。
生前整理を行うべき人の特徴とは
生前整理を行った方がいい人の特徴を解説します。主に家族がいる人や、死後に希望や不安がある人などが対象になります。
両親・配偶者・兄弟などの家族がいる人
両親、子供、配偶者、兄弟などの家族がいる場合、遺品整理の負担を軽減するために、積極的に生前整理を進めるといいでしょう。
両親や年上の配偶者しかいない場合、「自分の方が長く生きるだろうから…」という理由で生前整理を先延ばしするかもしれませんが、必ずしも家族が先に亡くなるとは限りません。
仮に自分の方が長く生きたとしても、病気で判断力が低下するリスクもあるので、早めに生前整理を進めましょう。
自分の死後に対して希望・不安がある人
死後の希望や不安がある場合も生前整理はおすすめです。たとえば葬儀や納骨の希望をエンディングノートに書いておけば、家族・親族に対応してもらえる可能性が高くなります。
エンディングノートに強制力はないため、100%実現するとは限りませんが、少なくとも本人の希望を伝えることはできます。
死後の不安に関しても、生前整理によって取り除きやすくなるでしょう。たとえばパソコンやスマホ内に見られたくないデータがある場合、生前整理の過程で削除できます。
体力が残っている人
生前整理は不要なものの処分など力仕事が多いため、健康で体力があるうちに行うことを推奨します。年齢を重ねて体力が減退すれば、精神的にも億劫になります。いつまでも生前整理に取り掛かれないといった状況も十分に考えられるため、早めに作業を進めることをおすすめします。
財産を持っている人
財産を持っていて複数の相続人がいる場合、相続トラブルが起こるリスクが高くなります。ただし生前整理の過程で遺言書を作成しておけば、「誰にどの財産を渡すか」が明確なので、相続人も従わざるをえません。
「自分は財産が少ないから」と思っていても、たとえば不動産を相続人間で平等に分けるのは難しいですし、死亡保険金のような、みなし相続財産が絡むケースもあります。
「うちは相続人が仲良しだから大丈夫」と思っている場合も、相続によってお金が絡めばどうなるか分かりません。事前にしっかり対策することが大切です。
生前整理と同時進行すべきこととは
おひとりさまの場合、生前整理と同時に死後事務委任契約についても検討しておきましょう。
死後に必要な事務手続きは多岐に渡ります。
葬儀や納骨、戸籍・住民票・厚生年金・国民年金などの役所手続き、公共料金や携帯電話代の支払い、クレジットカードの解約、自動車の廃車や名義変更、介護施設に入居していれば解約の手続きも必要です。
生前にそのような手続き(死後事務)を第三者に依頼する契約を死後事務委任契約といいます。
死後事務は家族や親族が行うケースが多いのですが、身寄りがないおひとりさまや、家族や親族に頼りたくないと考えている人は、死後事務委任契約を活用して信頼できる第三者に任せることで老後を穏やかに過ごせるでしょう。
死後事務委任契約についてもっと詳しく知りたい場合は、こちらの記事がおすすめです。メリット・デメリットだけでなく、手続きの流れを分かりやすく解説しています。
まとめ 生前整理は早めにスタートするのがおすすめ!
生前整理とは、将来を考えて財産や身の回りを整理する行為をいいます。家族の相続争いを防止したり、自身の生活が快適になったりするといったメリットがある一方、お金と労力がかかることには注意が必要です。
生前整理の一環として遺言書を作成したり、エンディングノートを残したりすることで死後に備えられますが、体力と判断力があるうちに取り組むことで、より適切に進められるでしょう。
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