ここでは限定承認の流れについてご説明させていただきます。
1:家庭裁判所に限定承認の申立
限定承認は、家庭裁判所に申述をする必要があります。申述した内容が受理されると効力が生じることになります。相続人が2人以上の場合には、相続人全員が共同して申述を行わなければなりません。
限定承認申述には期間があり、被相続人が亡くなった日から3か月以内とされていますが、相続人の中に、熟慮期間を徒過している者がいた場合でも、他の相続人の熟慮期間内であれば、共同相続人全員で限定承認を行うことができるとした判例があります。
申述に必要な添付書類
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 申述人全員の戸籍謄本
- その他相続関係に応じた必要書類
2:請求申出の公告・催告
限定承認は、相続財産の債権債務を清算する制度となりますので、まずは債務がどれほどあるのか、及び債権者を明らかにしなければなりません。その手段としては、限定承認をした相続人が債権者に請求申出の公告(被相続人に対して債権を持っている方がいる場合は名乗り出て下さいという公告)を、限定承認の申述の受理から5日以内にする必要があります。なお、共同相続の場合は、相続財産管理人が選任されるため、公告の期限は、管理人選任審判の告知を受けてから10日以内とされています。そして、すでに把握している債権者には個別の申出を催告します。
なお、公告の申込は、最寄りの官報販売所にて行います。公告に定められた期間内(2か月)に、申出をしなかった債権者で限定承認者に知れなかったものは、残余財産があれば残余財産に対してのみ権利を行使することが可能です。
公告期間内(2か月)に行うこと
- 財産管理口座の作成(相続人が2人以上の場合)
相続人が2人以上の場合には、相続人の1人が家庭裁判所によって相続財産管理人に選任されるので、選任された相続財産管理人が今後の清算手続きを行っていくための口座を開設致します。
- 相続財産の換価手続き
被相続人名義の銀行口座がある場合、限定承認の審判書を使い、財産管理口座に預金の解約をします。
また、相続財産の中に不動産があるときは、相続財産管理人は裁判所に不動産競売の申立をしてその不動産の換価を行います。この場合、第三者がその不動産を競落してしまう可能性があるため、相続人がその不動産に住み続けることが難しくなります。不動産を手元に残したい場合には、家庭裁判所に鑑定人の申立をして、不動産競売手続きを止め、相続人が優先的に買い取ることが可能になります。
公告期間後に行うこと
- 配当弁済手続き
公告期間が過ぎると、相続財産管理人は、届出のあった債権者やその他の知れたる債権者に対して、それぞれの債権額の割合に応じた配当を行います。
債権者のうち、利息制限法を超える利息で貸付を行っているような債権者については、利息制限法による引き直し計算をして、債務が残ればその額を基準として配当し、過払金が発生しているような場合には過払金の返還を受けます。
- 残余財産の処理
上述の債権届出期間に申し出なかった債権者や、相続人が把握していない債権者がいた場合、これらの債権者は、以上の配当手続の結果残った残余財産についてのみ弁済を受けることが可能になります。それでもなお残余財産に余りがあった場合、債権者からの請求があった場合には弁済に充てる必要があるため、手つけずにそのままにしておくことを推奨します。