相続税の申告期限は、被相続人(故人)が亡くなったことを知った日(基本的には死亡日)の翌日から10か月です。
10か月と聞くと、まだ余裕があると感じる人もいるかもしれませんが、その期間に遺産分割協議なども進めなければなりません。
また、期限内に相続税が申告できないと、無申告加算税や加算税などのペナルティが加算されることになります。
この記事では、相続税の申告期限や申告までの流れ、税理士に依頼する際の流れについて解説します。
相続税の申告を期限内に間に合わせるためには、被相続人が亡くなってから6か月以内を目安に税理士に相談した方が良いでしょう。
相続税の申告までの期間は10か月!
相続税の申告期限は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10か月です。
この10か月の期間に、被相続人の葬儀、財産や債務の確認だけでなく、遺産分割の話し合いなどを行う必要があります。
また、不動産を相続する場合は、その年の路線価を使用しなければなりません。
路線価とは、道路に面している土地の1平方メートルあたりの評価額のことで、毎年7月に国税庁が公表します。
つまり、不動産を相続する場合、被相続人が1月に亡くなったとしても、相続人は路線価が公表される7月までは相続税の申告ができません。
相続税を申告するまでには一定期間時間がかかるため、こうしたスケジュールを考慮して、早い段階で税理士に相談することが重要です。
相続税の申告の流れと期間
被相続人が亡くなったら、相続税申告以外にもやることがあります。
- 【被相続人の死亡日から四十九日の期間】財産や遺言書の確認
- 【被相続人の死亡日から3か月以内】相続放棄または限定承認の確定
- 【被相続人の死亡日から4か月以内】被相続人の準確定申告
- 【被相続人の死亡日から遅くとも9か月以内】遺産分割協議
- 【被相続人の死亡日から10か月以内】相続税申告・納付
この中で期限が定められているのは相続放棄、限定承認、準確定申告、相続税申告です。それ以外の手続きに関しては目安の期間を載せています。
【被相続人の死亡から四十九日まで】財産や遺言書の確認
被相続人が亡くなった後は四十九日までに、財産や遺言書を確認しましょう。
相続税の申告期限は10か月ですが、その間に財産評価や遺産分割協議などで時間がかかる可能性が高いです。
葬儀や法要などと並行して、遺言書の内容や、相続財産の把握、相続人の関係図などを確認しておくとスムーズに進められます。
四十九日の法要を終えた頃から、相続に関する話し合いなどの手続きを始めて、早めに税理士に相談しておくのがおすすめです。
【被相続人の死亡から3か月以内】相続放棄または限定承認の確定
被相続人の財産を放棄する場合や、一部だけ相続する場合は、相続放棄や限定承認を行う必要があります。
相続放棄とは | マイナスの財産を含む全ての相続財産を放棄すること(マイナスの財産とは要するに借金などのことで、マイナスの財産だけを放棄することはできません) |
限定承認とは | 預貯金や不動産、有価証券などプラスの財産を限度額として、マイナスの財産を引き継ぐ方法のこと。 |
相続放棄や限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知ったとき(基本的には被相続人の死亡日)から3か月以内に、被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
ただし、財産調査を行い、財産や債務を把握しなければ、相続放棄や限定承認をするべきか否か判断できません。
また、相続放棄は自分一人で手続きできますが、限定承認は、相続人全員で家庭裁判所に申述するため、相続人同士で事前に話し合っておく必要があります。
【被相続人の死亡から4か月以内】被相続人の準確定申告
相続人は、被相続人の死亡から4か月以内に、被相続人の準確定申告をしなければなりません。
被相続人の準確定申告とは、亡くなった人がやるべきだった確定申告を相続人が行うことです。
準確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税が加算されるため、必ず行いましょう。準確定申告をすべきケースは次の通りです。
- 被相続人が自営業者だった
- 不動産所得や事業所得がある
- 公的年金等による収入が400万円を超える
- 給与所得が2,000万円を超えている
- 複数からの給与所得がある
- 給料の年末調整を行っていない
- 土地や建物を売却した
- 生命保険の満期金などを受け取った
- 医療控除や配偶者控除、寄付金控除を受ける場合 など
一方で、準確定申告が不要なケースは次の通りです。
- 給料の受け取りが1ヶ所からのみで、年末調整をしている
- 年金収入が400万円以下で、その他所得が20万円以下
準確定申告は、相続放棄をした人を除いた相続人が連署を行い、被相続人の住所地を管轄とする税務署か、e-tax(国税電子申告)を利用して提出します。
【遅くとも被相続人の死亡から9か月以内】遺産分割協議
相続税の申告の手続きを考えれば、どんなに遅くとも被相続人が亡くなってから9か月以内(申告期限の1か月前)には、遺産分割協議を済ませ、遺産分割協議書を作っておかなければなりません。
遺産分割協議では、次の内容を話し合う必要があります。
- 法定相続人や法定相続分の確認
- 遺産の内容の確認
- 相続財産の評価額の算定
- 特別受益や寄与分の有無の確認
- 具体的な財産の分割方法
もめないと思っていても、実際に遺産分割協議が始まるともめることがあります。たとえもめて遺産分割が長びいたとしても、相続税申告は期日通りに行わなければなりません。
どうしても間に合わなそうな場合は、未分割申告を行うことで、ひとまず期日に間に合わせることができます。しかし、未分割申告をしたうえで遺産分割協議を行い、相続税申告をやり直さないといけません。
二度手間なうえに時間も多くかかってしまい大変ですので、期日に余裕を持って話し合いを進めることが大切です。
【被相続人の死亡から10か月以内】相続税申告・納付
被相続人の死亡から10か月以内に、相続税の申告と納付を行います。相続税の申告と納付は、次の手順で進めることになります。
- 遺産分割協議をもとに、相続税を計算する
- 相続税申告書を作成する
- 相続税の申告に必要な書類を集める
- 相続税申告書を税務署に提出して、相続税を申告する
- 相続税を税務署に納付する
相続税は、相続人であることを証明する書類と、相続税申告に必要な書類を用意して、被相続人が亡くなったときの住所地を管轄する税務署に提出します。
相続税は、税務署に直接持参する以外にも、郵送やe-taxを利用して申告可能です。
相続税は、税務署の窓口や金融機関などで納付できます。
相続税の申告を税理士に依頼する場合の流れ
相続税は自分で申告可能ですが、相続税の基礎控除額の計算だけでなく、相続や税金の知識が必要です。
例えば、生前贈与も贈与金額だけでなくいつの贈与なのかによって、課税対象か否か異なるため、税理士に依頼するのがおすすめです。
相続税の申告を税理士に依頼した場合は、次のような流れで手続きが進みます。
- 必要資料を準備する
- 税理士を探す
- 初回面談の予約・実施
- 正式に税理士と契約
必要資料を準備する
相続税を税理士に相談する前に、まずは相続関係の資料を準備しましょう。これは、相続税が発生するかどうかを確認するために必要です。
例えば、次のような資料を準備しておきましょう。
- 預貯金:被相続人の通帳
- 不動産:固定資産税の課税明細書
- 生命保険:保険証券
- 有価証券:残高報告書
- その他:財産の価値判断ができる資料
また、財産をおおまかにまとめておくと、相談がスムーズです。
税理士を探す
準備ができたら、税理士を探しましょう。税理士を探す際は、次の内容を考慮して選ぶのがおすすめです。
- 相続税に関する専門知識や実績
- 評判
- アクセスしやすいかどうか
- 料金体系
特に、相続税に関する専門知識や実績があるかどうかは重要です。
税理士と聞くと、どのような税金にでも詳しいと思うかもしれませんが、法人を顧問として、法人税、所得税、消費税の申告を行う税理士が多いです。
加えて、税理士資格の取得には、相続税法を必修としておらず、相続税に詳しい税理士は限られています。
相談するなら、相続税の知識や実績のある税理士を選びましょう。
初回面談をする
税理士に相談する場合は、まず税理士事務所に連絡をして、面談の予約をします。
面談の予約方法については、各税理士事務所によって異なりますが、電話やメール、ホームページの予約フォームから予約可能です。
初回相談無料の税理士事務所が多いですが、30分~60分で、5,000円~1万円ほどかかる場合があるため、予約を取る前に確認しましょう。
また、依頼する際のサポート内容や、費用についても事前に説明してもらえるのが一般的です。
面談相談では、前述した資料を持参するほか、事前に質問事項をまとめておくと、時間内に効率よく相談できます。
正式に税理士と契約
面談相談で不明点もなく、納得できれば、正式に税理士と契約することになります。
税理士報酬は、相続税申告の前後に支払うのが一般的ですが、税理士によっては、この契約時点で費用が発生するケースもあります。
また、契約前に、費用や見積もり、サポート内容などについて説明がありますが、必ず契約前に確認しておきましょう。
相続税の申告が期限に間に合わなかったらどうなる?
相続税の申告が期限に間に合わない場合は、無申告加算税や延滞税等のペナルティが課され、税金を払わなければなりません。また、未分割申告もせずに申告期限を過ぎると、相続税額を安くできる特例も使えなくなってしまいます。
申告期限まで余裕がないとついつい慌ててしまい、申告漏れなどミスをする可能性があります。申告内容に誤りがある場合は修正のために再度申告の手続きをしなければなりません。遺産分割協議などで時間がかかる可能性もあるため、相続税の申告は余裕をもって早めに着手しましょう。遺産分割協議が長引き、申告期限に間に合わなそうな場合は未分割申告をご検討ください。
相続税申告を税理士に相談するならいつが良い?
相続税の申告を税理士に相談するタイミングは早いに越したことはありません。
相続税申告の依頼を受けた税理士は、必要書類の収集や相続財産の適正な評価、相続税の計算、申告書の作成などを行います。
戸籍収集や相続税の適正な評価などには時間がかかりますし、遺産分割協議にも時間がかかる可能性があります。
そのため、どんなに遅くとも、被相続人が亡くなってから6か月以内に相談してください。
まとめ
- 相続税の申告期間は、基本的に被相続人が亡くなった日の翌日から10か月
- 相続税を期間内に申告しないと、無申告加算税などのペナルティが発生してしまう
- 相続税の申告以外にも、相続放棄や限定承認、準確定申告などの期限に注意が必要
- 遺産分割協議でもめる可能性もあるため、どんなに遅くても、被相続人が亡くなってから6か月以内に税理士に相談すべき
相続税の申告は、相続手続きも並行して進める必要があります。
相続手続きは、ほとんどの人にとって初めての経験であることが多く、書類の準備だけでも骨が折れ、不安や心配を抱えていることがほとんどです。
相続税の手続きに不安がある場合は、相続税に詳しい税理士に相談しましょう。